「健康は最重要だがプライバシーも」 「原則着衣」となった学校検診、現場の対応にばらつきも
学校の定期健康診断(学校健診)を上半身裸で行うことに疑問の声が上がっていたことを受け、本年度から「原則着衣」に改められた学校健診が始まっている。多くの学校は体操服やタオルを活用して実施するようになったが、意思に反して脱衣で受診させられた子どももいるなど現場の対応にはばらつきがあり、倫理学者は「実施方法が一貫していなければ、学校健診の科学的根拠が乏しくなる」と懸念を示している。 学校健診を巡っては、児童生徒や保護者から脱衣での実施に不安や苦痛を感じるとの声が上がり、文部科学省は今年1月、「正確な検査・診察に支障のない範囲で、原則、体操服や下着などの着衣、タオルなどで体を覆い、児童生徒のプライバシーや心情に配慮する」とする通知を出した。一方、必要に応じて衣服やタオルをめくる場合があるとし、教委や学校に「児童生徒や保護者に事前に説明する」ことを求めている。 昨年度まで上半身裸での受診を基本とした京都市では、文科省通知を受けて体を隠す工夫をする方向に変更された。市教委が本年度の実施状況を小中高に調査(複数回答)したところ、76・7%が体操服、37・1%が下着類着用の上で健診を行ったと答え、タオルは12・1%、制服も10・4%で「着衣なし」と回答した学校はなかった。 上半身裸で状況に応じてタオルで胸部を隠すようにしていた向日市も、本年度は体操服着用で健診を行うよう学校に指示した。長岡京市は病気の見落としリスクを防ごうと、タオルで体を覆い、心音の聴診や皮膚疾患の視診の際は胸部を見せる方法を取り、健診方法や、女子の受診時に女性教職員が立ち会うなど配慮を記した文書を事前配布。申し出を受け、体操服の着用など個別対応したケースが6件あったという。 一方、本年度も上半身裸で健診を受け、苦痛を感じたとの声も聞かれる。滋賀県内の公立中に通う女子生徒(14)は今春の健診でも体操服や下着を脱ぐよう指示され、聴診や脊柱の検査など診察時は上半身裸だったという。生徒は「悲しかった。去年と同じだった」と打ち明ける。 学校健診の実施方法のばらつきは大きい。京都市教委が胸部聴診時の対応を尋ねたアンケート(複数回答可)では「教職員が着衣等をめくって診察」が52・1%、「学校医が着衣等をめくって診察」が47・5%と多かった一方、「着衣の上から診察」も25・4%と、学校により差がみられた。