逮捕されたみずほ銀行元常務(67)が雑誌連載で主張していた謎の教え「銀行はこう使え!」の中身とは
人を肩書きだけで判断してはいけない、とはいっても、さすがにこの経歴を疑うことは難しかったのかもしれない。警視庁捜査二課は9月18日、独立行政法人「福祉医療機構」の新型コロナウイルス対応の融資を無登録で仲介したとして、同機構元理事で、みずほ銀行の常務執行役員を過去に務めた三浦由博容疑者(67)ら3人を貸金業法違反容疑で逮捕した。 【画像】逮捕されたみずほ銀行元常務の三浦由博容疑者 警視庁担当記者が明かす。 「当時、融資には申し込みが殺到しており、三浦らは『審査の優先順位を上げて確実に融資を受けさせる』などといって、医療法人などを勧誘していたようです」
「64億円の融資を仲介して、手数料として計約5億円を…」
三浦は2011年にみずほ銀行の常務執行役員を退任。17年から機構に天下り、新型コロナウイルスの猛威が吹き荒れる前年の19年まで理事として在籍。その後、再びみずほへ理事として戻っていた。融資の仲介をしていたのはみずほの理事時代と重なる。 「三浦らは1年8カ月の間に約40の法人の計約64億円の融資を仲介して、手数料として計約5億円を受け取ったと見られます。機構の後輩から、公開されていない融資条件を聞き出して、なるべく融資額が大きくなるよう、法人を指南していた疑いがあります」(同前) 機構からの融資を相談した法人側にしてみれば、メガバンクの幹部で機構のOBという肩書きだけでも期待は膨らんだだろう。しかも三浦は、みずほ銀行のバンカー時代から「融資を引き出せる男」として知られていたようだ。
異例の雑誌連載で教えていた「OBの活用」とは
みずほ銀行の大阪・梅田支店長だった05~06年には、「銀行はこう使え!」なる記事を現役行員としては異例ながら雑誌「日経ベンチャー」に連載している。その記事で強調していたのが、「OBの活用」だった。 《“担当者OB”とも情報交換を続けるようにして下さい!》《支店長をどう使いこなすか》 記事では自身の体験談も交えながら、銀行の利用方法を余すところなく明かしていた。 肩書きも実績も十分となれば、貸金業の登録がなくとも融資の仲介依頼が引きも切らなかったのも無理はない。ただ、捜査関係者は、「実際には三浦の仲介がなくても融資は成立していたようだ」と明かす。別の捜査関係者が続ける。 「機構の役職員は福祉医療機構法により、『みなし公務員』と規定されていることから、捜査二課は手数料の一部が機構関係者にもわたった贈収賄事件への発展も視野に捜査した。しかし、そうした資金の流れや機構側の具体的な便宜の跡も確認できず、貸金業法での立件に切り替えたようだ」 危うく機構の後輩にまで迷惑をかけるところだった三浦。法律の使い方には疎かったようだ。
「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年10月3日号