不老長寿の実・ムベ 販売していた「ドライブインやくの」の閉店を受け、夜久野町日置の国道沿いで直売
京都府福知山市夜久野町の西垣自治会(金川富士雄自治会長)が栽培する地区の特産品で、不老長寿の実と伝わる果物・ムベが、今年も11月上旬から売り出される。これまで販売、発送を担っていた「ドライブインやくの」の閉店を受け、新たな販売方法の検討を進めていた。場所提供の申し出があり、同町日置の国道9号沿いで、地区住民たちが直売する。 ムベはアケビ科つる性の植物で、天智天皇(626-671)が狩りに出掛けた際に、元気な老夫婦に長寿の果物として差し出された実を食べ、「むべなるものかな(もっともだ)」と言ったことが由来とされる。 同自治会では「地元を元気村に」と、2017年冬に約7アールの休耕田を開墾し、幼木を100本ほど植栽。住民たちが協力しあって栽培を続けてきた。集団栽培している場所は全国でもほとんどないとみられ、毎年、京阪神や関東などからも注文が入り、リピーターも多いという。 収穫した実はこれまで、同町小倉の国道9号沿いのドライブインやくのに持ち込み、同店が店舗内で販売し、全国への発送も行っていたが、3月末に閉店。販売場所の確保や発送手段を一から考える必要があり、同自治会ムベ事業部長の衣川さん(73)や金川自治会長を中心に、住民たちで話し合いを進めてきた。
町内の飲食店が場所を無償提供
そこに販売場所の提供を申し出たのが、同町日置の国道9号沿いで「汁なし担々麺とがし」を営む、加藤さん(50)だった。ドライブインが閉店して間もない頃、担々麺店の横に建つ横7メートル、奥行き3メートルほどの小屋の無償利用を提案した。 「販売場所が無くなったとは聞いていたので、何か協力できればと思って声を掛けました。うちの隣にはレストランのはっかく亭さんもあり、話題性のあるムベとの相乗効果でお客さんが増え、地域に活気が出ればプラスしかないと思いました」と加藤さん。 衣川さんは「販売方法が決まるまでに多くの方から連絡があり、気に掛けていただいているんだと感じられ、ありがたかった。もともとは『元気村・西垣』の発信を目的に始めたムベ栽培。今年は原点に立ち返り、『住民たちの手でやってみよう』と、お世話になることに決めました。楽しみにしている人に届けることができそうでうれしい」と目を細める。 天候にもよるが、順調にいけば11月上旬から収穫を始め、同月末ごろまで毎日、住民たちが直売所に立ち、販売、発送作業をする。 例年は収穫が始まる時期に市内外の人を招いて収穫祭を開いていたが、今年は自治会のみで行う。 ムベの出来は平年並みといい、全体で2500~3千個の収穫を見込んでいる。