福西崇史がEURO2024を総括「個の質、組織力ともにスペインは大会No.1だった。中でも一番印象に残ったのはダニ・オルモ」
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 第101回のテーマはUEFA EURO 2024について。スペインが12年ぶり大会最多4度目の優勝で幕を閉じたEURO2024。攻撃的なスペインに対して、組織的な守備で挑んだイングランドの決勝戦を中心に、福西崇史がEURO2024を振り返る。 * * * 現地時間7月14日(日)にUEFA EURO2024の決勝スペイン対イングランドが行われ、2-1でスペインの12年ぶり史上最多4回目の優勝で大会の幕を閉じました。今大会も個の力に優れるチームや組織に優れるチーム、そのどちらもハイレベルなチームがひしめき合い、非常に見応えのある大会だったと思います。 決勝に駒を進めたスペインとイングランドは、どちらもタレントが豊富でスペインは攻撃的なスタイルで圧倒し、イングランドは守備の硬さとビハインドから同点に追いつき逆転するメンタリティと勝負強さで勝ち上がってきました。 そんな両チームがぶつかった前半は、スペインがボールを保持して主導権を握り、イングランドはそうなることをわかった上で受けていたと思います。右サイドのブカヨ・サカがときにウイングバックのようになり、カイル・ウォーカーとともにニコ・ウィリアムズを抑えるなど、スペインの強みに対して守備の部分で工夫がありました。 前半はスペインがペースを握りながら0-0と膠着状態で折り返しました。しかし、後半が始まって2分、ニコ・ウィリアムズの先制点ですぐに試合が動きました。 イングランドが4-4-2で構える2トップの脇にファビアン・ルイスが落ちてボールを受け、ジュード・ベリンガムが判断に迷っている間に押し出された右SBのダニエル・カルバハルへ縦パス。カルバハルがワンタッチでラミン・ヤマルへパスを出したことで、イングランドはSBもCBも対応が間に合わなくなり、パスの質とタイミングは見事でした。 そのパスをヤマルがボールを流しつつ前を向き、その瞬間にアルバロ・モラタ、ダニ・オルモが次々に斜めに追い越してDFを引き付け、大外でフリーとなったニコ・ウィリアムズが冷静に左足のシュート。外から中へ侵入し、スペースを作る流れは教科書に載せたいくらい鮮やかでした。 守備的に戦っていたイングランドにとって重い先制点になりましたが、そこからハリー・ケインを下げてオリー・ワトキンス、コビー・メイヌーを下げてコール・パーマーを入れ、1点を取りにいく迫力はすごかったですね。 後半28分、パーマーの縦パスからサカがドリブルでペナルティエリアに侵入し、横パスをベリンガムが落としてパーマーのダイレクトシュート。所属のチェルシーでもこのようなシュートを決めてきましたが、EURO決勝という大舞台でまったく力むことなく、針の穴を通すような狭いところを射抜いた冷静さとシュート技術、それを22歳の選手がやってのけるメンタリティ。昔ジーコがシュートはゴールへのパスだと言いましたが、まさにそんな言葉がぴったりなスーパーゴールでした。