わら細工作家・藤井桃子さん、黄金色の温もりを綯う「WARAジュエリー」
丈が120センチ以上にもなり、創作に適する品種「アサヒモチ」を、毎年3月頃に苗から育て始め、8~10月に収穫。天日干しで徹底して水分を抜くと、11月には極限まで染みを排した素材が完成する。
当初、緑色に近いわらは時間の経過とともに淡く色を変え、黄金色に輝く。山里が色づき、雪化粧する頃には風合いが自然由来の温かみを増す。
斬新アレンジ
イヤリングやブローチを手がける際、わらと組み合わせる水引や絹糸、パールなどの異素材は最小限に抑える。そうすることで、伝統工芸に現代風のエッセンスを加えた斬新なアレンジが生まれる。
作品は多方面から引き合いがあり、海外のデザイナーや人気セレクトショップなどとの共同制作も。「ひたすら縄を綯う職人的な一面もあるが、アーティストとして、わらの新たな価値を見せたい」と意気込む。
祇園祭の保存会には祭りで使うしめ縄を、鞍馬寺には行事で男衆が履くわらじを納め、古都の伝統を下支えしている自覚もある。最近は大阪で個展を開くなど、アート作品としての認知も進んできた。一方で、わら細工の担い手は減り続けており、京都で体験講座を催すなどして、裾野の拡大にも努める。
わら細工は各地に根付き、特徴はそれぞれに異なる。「先人の感性や知恵が詰まった宝物。まだ見ぬ手法を学び、作品に落とし込みたい」。パイオニアとして素材が秘める無限の可能性を信じ、これからもわらを綯い、未来につなぐ。(敬称略、東大貴)