耐震不足で庁舎取り壊し→スペースが足りない→テレワーク進めるきっかけに! 目標は「4割出勤」、でも大量の公文書や災害対応どうする…期限は2年、達成可能?
3千人が働く庁舎の一部で耐震性不足が判明した。県は庁舎を取り壊し、他の施設を改修する再編計画を描くが、収容できる職員は現在の半数ほどになり、多くの人のスペースが足りなくなる。庁舎新設案もあるが、このご時世、約1千億円の出費に県民の理解が得られるだろうか。それなら発想を転換して、テレワークを積極的に導入するきっかけにしたらどうか―。 【グラフ】「一番幸せでいられる場所に住む」コロナ機に増えた移住 理想の一軒家、テレワークの拠点づくり…実際の生活は?
「テレワークで職員の出勤率を4割に」。県は全国的にも珍しい数値目標を定めた。自由な働き方ができるとの期待が上がる一方で、「大量の公文書を電子化するのに途方もない時間が必要だ」「災害が起きたときの対応をどうするのか」といった〝役所ならでは〟の課題が立ちはだかる。 取り壊しは2026年度の予定で、残された期間は2年。兵庫県の挑戦は実を結ぶのか。(共同通信=伊藤陸) ▽50分だった通勤時間はゼロに。子どものお迎えに行きやすくなった 2024年4月上旬の平日。県広報広聴課に異動したばかりの主任・大西晶子さん(32)は兵庫県明石市の自宅でノートパソコンを開き、前任者とオンラインでミーティングしていた。「引き継ぎ書の件ですが…」。長女(2)のおもちゃが整然と並ぶリビングで、大西さんは「家族の時間がたくさん取れて子育てもしやすくなった」とほほえんだ。 2014年入庁の大西さんはこの春人事課から異動し、県の施策を発信する広報番組の制作に携わる。神戸市内の県庁までは自転車と電車で約50分。これまでは共働きの夫とバタバタと出勤していたが、通勤時間はゼロに。保育園に通う長女はまだ小さく体調を崩すこともあるが迎えに行きやすくなった。「メリットは大きい」と感じる。
一方で、異動後の職場メンバーとはまだほとんど顔を合わせておらず雰囲気が分からない。これまでの働き方に慣れているところもあり、対面で働いた方がコミュニケーションを取りやすいとも思う。「徐々に慣れたらいいのかな」。期待と不安は両方ある。 ▽耐震改修は数百億円、新設なら1千億円 三つある県庁舎のうち1、2号館の耐震性不足が判明したのは2023年3月のことだった。1、2号館はいずれも旧耐震基準で1966年と70年に建てられた。耐震改修には数百億円かかり、築年数が50年超えの庁舎を長期的に継続利用することも難しいと判断。取り壊しが決まった。庁舎を新設する計画もあるが、資材高騰の影響もあり約1千億円もかかる費用がネックになった。 そこで持ち上がったのが、3号館や既存の県施設を改修して移転する県庁舎再編計画だ。ただ、1~3号館で働く職員は約3千人。再編後の庁舎は大幅に手狭になり、5~6割しか収容できないと見込まれている。