「発達障害ビジネスだ」専門医が批判、学会も認めない療法を勧めるクリニックの実態 患者の頭に「磁気刺激」、治療代に高額ローン組ますケースも
遠方でもあり、即契約はせずにいったん持ち帰ったが、夫などと相談し「なんでもできることはしてあげたい」と、32回(1回約20分)、計約60万円分の施術を契約することにした。 実は息子には、学会の指針でTMS使用を避けるようにと記されているてんかん発作があったため、クリニックには伝えていた。職員からは「部分性発作なので大丈夫です」と説明を受けたため標準のコースを選んだのに、施術を数回受けた後、機器を扱う臨床工学技士から「てんかんがあるので、右側の頭(の施術)はやめときますね」と言われ、困惑した。女性は次第にクリニックに不信感を募らせるようになった。 結局、約1年後に予定の半分ほどの回数で中止を決めた。未施術分などの返金を受けたが、施術済みの分は返金されなかった。治療効果も実感できておらず、女性は「お金だけでなく通院時間も、そして期待した私の気持ちも返してほしいです」と訴えた。 この女性の他にも、複数の患者が取材班に対しクリニックの治療に疑問を投げかけている。
読み書きや計算が苦手で、人との会話でしどろもどろになりやすいという千葉県の30代男性は、クリニックで発達障害のグレーゾーンと指摘された。金銭的余裕がなく契約せず、別の精神科医にかかり、知能検査で軽度の知的障害と診断された。「クリニックの見立ては正しかったのだろうか」と疑問視している。 ▽心理テクで契約獲得 共同通信は、このクリニックのカウンセラー向け内部資料を入手した。タイトルは「契約の取れるカウンセラーになるための営業学」。作成は2023年2月で、部外秘を示す「CONFIDENTIAL」と書かれていた。 資料では、最初の情報が意思決定に影響する「アンカリング効果」と呼ばれる心理学のテクニックを説明。最初に機器の値段は数千万円だと示すことで、数十万円の施術費を安く感じさせる手法も紹介している。 関係者によると、カウンセラーの給与体系では、基本給に加算する「能力給」は、契約に至った割合を反映する仕組みだった。エステなどの営業経験がある人が採用されやすいという。勤務するカウンセラーは「医療機関の感覚が薄く、契約が取れればよいという雰囲気だ」と利益重視の姿勢を明かした。