「発達障害ビジネスだ」専門医が批判、学会も認めない療法を勧めるクリニックの実態 患者の頭に「磁気刺激」、治療代に高額ローン組ますケースも
文部科学省の22年公表のデータによると、全国の公立小中学校の通常学級で、発達障害の可能性を示す「学習面か行動面で著しい困難がある」児童・生徒の割合は8・8%に上る。 発達障害の診断や治療、助言を求めて、多くの人が精神科や診療内科を訪れる。しかし、未成年を中心に専門的に診られる児童精神科医の数が足りず、診察を待たされるケースが慢性化している。一方でインターネットでは、検索すると「すぐに診断、治療できます」とうたうクリニックが検索上位に出てくる。 そして、このクリニックを受診、TMSの施術を受けた後に治療効果が得られないなどと違和感を抱いた患者が、セカンドオピニオンを求めて受診に来ると、複数の精神科医が証言している。 ▽「安全に受けられる」と信じたが 「『安全に受けられる』との医師やカウンセラーの言葉を信じて高額契約を結んだのに…」。そう記者に切り出したのは、小学3年の息子を持つ千葉県の30代女性だ。
女性によると、息子は小学校に入った頃から成長の遅れが大きく感じられるようになったという。同級生が5分で終えられた宿題を、1時間かけても終えられないこともあった。文字や時計を読むのが苦手で、小学校の教員からは特別支援学級を勧められた。 千葉県内にある病院の脳神経内科で、ASDやADHDと診断されたが、処方された大量の薬に不安を感じていた。小学校の教員からは「息子さんが午前中に全く起きない。ゆすって起こしても何をしてもだめ」と指摘されたこともあった。副作用は深刻だった。 当初は、近所で担当医を変えようと他院を探したが、地域に児童精神科医は少なく、1年待ちの予約状況となる場合も少なくなかった。そんな時に予約が取りやすくて駆け込めたのが、このクリニックだった。2022年春のことだった。 クリニックを訪れると、その日のうちにQEEG脳波検査を受け、「脳に混線がある。年齢が低ければ低いうちに(TMSを)やった方が、効果が出る」「効果はずっと残る。根本治療だ」などと医師から説明を受けた。