井上尚弥と30億円契約の「リヤド・シーズン」総責任者、PFP制定の米リング誌買収…PFP尚弥2位、中谷9位
サウジアラビア最大のエンターテインメントフェスティバル「リヤド・シーズン(Riyadh Season)」の運営責任者である同国総合娯楽庁(GEA)のトゥルキ・アル=シェイク長官が12日、自身のインスタグラムなどのSNSで、米国で最も伝統のあるボクシング専門メディア「THE RING」の完全買収を決めたと明らかにした。 今月に入り、「リヤド・シーズン」はプロボクシング世界4団体スーパーバンタム級(55・3キロ以下)統一王者・井上尚弥(大橋)と推定総額30億円の大型スポンサー契約を結んだばかり。同長官はSNSで「今週初め、リングマガジンの100%買収契約を決めた」と投稿。リング誌は2年前から雑誌の紙面発行を休止し、電子版での記事のデジタル配信のみだったが、同長官は「紙版は2年の休止後すぐに復活し、米国と英国市場で入手可能になる」とした。「この雑誌は完全に独立し、素晴らしい作家とボクシング競技のあらゆる面に焦点を当てる」とし「リングマガジンのレガシー(遺産)を往年のメカニズムに戻します」と宣言した。米国で最も権威のある専門誌であることを示すためにも「毎年、壮大な表彰式を行う計画も進行中」だという。 現在、リング誌のサイトは「近く再開(COMING SOON」となって休止しているが、同長官はあと数週間で、ウェブサイトとモバイルアプリの新しい形態を発表する予定だと明かした。リング誌はこれまで、数々の功績を残してきたが、とりわけ、同誌が制定するパウンド・フォー・パウンド(PFP、全階級を通じての最強ランキング)は多くのプロボクサーが目指すところで、現在1位はヘビー級の3団体統一王者オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)で、2位は井上尚弥。井上は2022年に日本人で初めて1位となり、PFPの称号を手にした。現在のランキングでは、将来の1位を目指すと意欲を見せるWBC世界バンタム級(53・5キロ以下)王者・中谷潤人(M・T)が9位に入っている。 「リヤド・シーズン」は、2019年にサウジアラビア娯楽庁が一大プロジェクトとしてたち上げた、同国国営のグローバルエンターテインメントプロジェクト。スポーツやコンサート、展示会などのイベントを通じて、国内外のエンタメ産業を活性化させることを目的としている。これまでにもサッカーのポルトガル代表C・ロナウドやアルゼンチン代表リオネル・メッシ、陸上短距離のウサイン・ボルト氏(ジャマイカ)やアーティストのジャスティン・ビーバーら世界的なビッグネームとのコラボを実現してきた。ただ、同長官は「リング誌は『リヤド・シーズン』に関与することなく、完全独立した会社となります」としている。同長官は「ボクシングのバイブル(リング誌の別名)を過去に見たことのない高みへと導こう」と意欲を示した。 ◇『The Ring(リングマガジン)』 1922年、米国で創刊された月刊専門誌で、ボクシング界では最も権威があると認められている。初代編集長のナット・フライシャー氏は編集活動の一方、ポーン・キングピッチ―ファイティング原田戦などのジャッジも務めた。22年から独自に認定した王者にベルトを授与しており、初代王者はヘビー級のジャック・デンプシー(米国)。24年から独自のランキングを選定。28年には最優秀選手賞などを創設した。PFPは17階級(WBA、WBCは18)の全選手が同じ体重と仮定して、一番強い選手に与えられる呼称。89年にPFPランキングが導入された。22年11月、12月合併号を最後に雑誌形態の発行を休止し、現在は電子版のみの発行となっていた。現編集長はダグラス・フィッシャー氏。
報知新聞社