新垣結衣×早瀬憩 「誰かと食べるごはんはおいしい」――人と人は分かりあえない現実の中で、誰かと生きていくには
早瀬憩(以下、早瀬):槙生ちゃんは、言葉にしづらい感情をバシッと言ってくれますよね。朝の両親の葬儀中で「決してあなたを踏みにじらない」と言ってくれたシーンは、朝として聞いて、泣きそうになりました。
「ある日突然、大人になるわけじゃないんだよ」
新垣は現在35歳、対する早瀬は16歳。19歳差の2人の年齢は、原作とほぼ同じだ。そんな本作では、朝が槙生の「大人らしからぬ姿」を見て驚くシーンが数多く存在する。早瀬は作中の「ある日突然、大人になるわけじゃないんだよ」というセリフに、新鮮な驚きがあったという。
早瀬:私は、「違国日記」の撮影前までは、長い時間一緒に過ごしてきた大人といえば、家族や先生、あとはマネージャーさんだけでした。だから「大人=かっこよくて、自分のことは自分でできる」イメージが強かったんです。でも、この作品に出てくる大人って、槙生ちゃんだけじゃなくてみんな悩んでいるので、「大人も悩むし、完璧ではないんだ」と感じられました。これは、自分にとってすごくよかった気がします。
新垣:私は15歳の頃に上京してきたんです。当時は分からないことだらけでしたけど、今はその倍以上生きてきて、見えてるものが増えたなぁとは思うのですが……30代って、もっと大人だと思ってました(笑)。
大人って、いろんなことを知ってて、ある程度のことはうまくやれる存在だと思っていたんですけど、実際自分が大人と呼ばれる年齢になっても早起きも予約の電話も苦手だし、できないことも知らないことも山ほどある。いつまでたっても途中なんだと日々実感しているので「違国日記」のキャラクターには、「そうだよね」と思うことが多いです。
早瀬:でも、現場にいる結衣さんや瀬田なつき監督は、1つ質問すると100ぐらいに返してくれて……すごいなぁって。大人の人たちに相談したことがなかったので「聞いてもいいんだ」と初めて思えました。大人って少し怖い印象もあったのですが、撮影期間を通してハードルが下がったような気がします。