読売ジャイアンツがファッションブランドとの協業を推進するワケ
読売ジャイアンツが、自軍のブランディング強化に力を入れている。NPB(日本プロ野球)で最も歴史があり、2024年に90周年を迎えた同球団だが、近年「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)」や「ブラックアイパッチ(BlackEyePatch)」、「アトモス(atmos)」、「ビームス(BEAMS)」などのファッションブランド、ショップと積極的にコラボレーションを展開した。 そのほか、2022年には「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」、2024年には「ティファニー(Tiffany & Co.)」とのコラボレーションユニフォームを発表。デザイナーズブランド、ラグジュアリーブランドのロゴをユニフォームに入れるのはともにNPBとして初の試みとなった。 読売ジャイアンツが、ここまでファッション業界と深く関わるようになった理由は何か。球団に取材を敢行した。
ファッション業界と読売ジャイアンツの結びつきが強くなったのは、2020年に「ニューエラ(New Era(R))」とライセンス契約、2021年にオフィシャルスポンサー契約を結んだことがきっかけの一つ。あくまでブランディングの指針は球団側で定めているが、ニューエラと契約を結び、コラボレーション関連の相談をするようになったことで、より深度のある企画実現が可能になったという。これまで老若男女に愛されてきた同球団は若年層への更なるアプローチを図っており、「90年続いてきたからといって、100年続くとは限らない。これからも前例に捉われない、向こう見ずなチャレンジを続けていく」と様々な協業を続けていくことを示唆した。 コラボでは、これまで築いてきた伝統に捉われない、柔軟な姿勢を見せる。2021年に発表した「タカヒロミヤシタザソロイスト.」とのコラボでは、球団の顔とも言える「YGロゴ」の形を崩したオリジナルロゴを提案した。デザイナーの宮下貴裕からデザインが上がってきた時はニューエラ側から「これは難しいのでは」といった声も挙がったが、「日本を代表するファッションデザイナーがYGロゴをデザインするとこうなるのか」と型を崩すことを前向きに捉え商品化。ファンからの評判や売上も上々で、翌年には第2弾を発売した。「90年続いてきた伝統はあるが、そこに固執しすぎても良くない。今のジャイアンツに何がフィットして、逆に何がマイナスなのかをしっかり考えていく」(球団)。 もちろん、歴史ある球団として守っていく部分もある。読売ジャイアンツのイメージカラーといえばオレンジ。球団を象徴するカラーとして広く浸透している一方で、グッズ製作の際「オレンジを採用することでデザイン的に難易度が上がることはある」(球団)というが、今後も一部のコラボユニフォームなどを除き、「ジャイアンツオレンジ」を変えることはしない。これまで受け継がれてきたオレンジという「伝統」は守りながら、コラボレーションなどを通して新たな「挑戦」を続けていく。 8月13日時点で、読売ジャイアンツは首位・広島東洋カープと1ゲーム差のセリーグ2位。丸佳浩、菅野智之など主力の活躍に、ヘルナンデスやモンテスといった新外国人選手の加入、チームの顔である坂本勇人も復調してきたことで、4年ぶりのリーグ優勝、12年ぶりの日本一に期待がかかる。今シーズンはファッションブランドとのコラボレーションとペナントレースの両軸でファンを楽しませてくれそうだ。