新球場からスター選手巣立って 阪神2軍施設「ゼロカーボンベースボールパーク」建設キーマン・遠藤孝治工事所長を直撃
来年3月開業予定の新ファーム施設「ゼロカーボンベースボールパーク」の建設に携わるキーマンへの直撃インタビュー(不定期掲載)で“シン・虎の穴”誕生への軌跡を追う。第2回は熊谷組関西支社の遠藤孝治工事所長(58)が登場。やりがいを感じながら進めているという工事の進捗(しんちょく)状況を説明しつつ、新球場からスター選手が巣立つことを熱望した。 【写真】工事が進む新ファーム施設 ◇ ◇ -昨年3月に着工した工事の進捗具合は。 「我々が第1工区と呼んでいるメイン球場や市民球場のある工区は、メイン球場の日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎の軀体(くたい)工事(骨組み工事)がまもなく終わるところです。同時並行で内装工事を進めています。躯体工事が終わりましたら、外装の工事に移っていく流れです。あとは外構工事でフェンスの取り付けをしたりしています。寮と室内練習場の第2工区は、外装工事がほぼ終わりかけで、外観は完成に近い姿を阪神電車からも見ていただける状況になっておりまして、内装工事も佳境が過ぎて、最終段階の仕上げに入ってます」 -今後の工事でヤマになりそうなのは。 「ここは敷地面積が7・4ヘクタールと非常に広いのですが、それに対して、ほぼほぼ敷地いっぱいに施設の建物ができます。工事が進めば進むほど、形ができて余剰地がなくなっていきますので、資材を置く場所にしかり、車両通路しかり、最後の追い込みでいろいろあるとは思いますが、計画良くスムーズに進めていきたいと思います」 -スタッフの数は。 「専門工事業者さん、鉄筋屋さん、足場を組むトビさん、電気屋さん、空調屋さんなど、非常に多くの方々に携わってもらっていまして、1日250人くらいが工事を行っています。今後は工事の種類がもっと増えていきますので、総勢400人くらいになると思います」 -熊谷組として球場建設の前例は。 「滋賀の皇子山球場は熊谷組の建設ですが、プロ野球球団が使用する球場の建設は初めてです」 -個人的に初めて球場建設に携わることになって。 「プロ野球の球団施設ということで、驚きが第一印象でした。図面を見ていく中で、面白そうな建物やなと。やる側としては真四角の簡単な建物じゃなくて、難しそうだけど、やりがいがあるだろうなと思いました。オープンして皆さんが来ていただいたとき、どんな感想を持たれるかが興味あるところですね」 -球場建設の前例が少ないだけにしっかりとリサーチも。 「着工段階で甲子園と鳴尾浜を見学させていただいて。実際の形、規模感を見させていただきました。必要な施設の説明も受けて。初めて見る物もありましたし、大変勉強になりました」 -参考になったのは。 「規模感が分かりましたね。図面で見るのと実物を見るのは違いますし。甲子園の室内練習場も見させていただいたし、虎風荘も見させていただき、スケール感が分かりました。出来上がるとこういう大きさになるんだろうなと、想像しやすかったです」 -球場建設の難しさは。 「プロ仕様となれば正規の大きさというのがありますし、ましてや甲子園と同じ大きさということで、一つ一つの扱う物が大きいですよね。鉄筋を組んでコンクリートを打つスタンドの躯体工事についても、野球場特有の扇状の特殊な形状をしていますし。断面の形状は階段状になってまして。3階建てですが、階高がそれぞれ高くて。施工にあたって入念な事前計画を練りました」 -甲子園と同じ広さ、同じ向きで、2軍選手にも同じ環境を与えられる。 「プロ野球選手に使ってもらえる球場を造ることに携わることができて大変うれしいです。ずっと残りますし、工事に携わっている人間が、ずっと自慢できる仕事です」 -工事スタッフの間でも阪神の話題は挙がる? 「毎日出ていますよ。私をはじめ、阪神ファンのスタッフも多いですし、勝敗や順位に一喜一憂しています。甲子園にスタッフが試合を見に行かせてもらったこともありまして。この新しい球場から巣立って、甲子園で活躍する選手が出ればうれしいですね」 -改めて新球場のアピールを。 「来年3月の開業に向けて、作業員一丸となって工事を頑張っております。公園の中で、近い距離で選手を見ていただけて、プロ野球に触れることができると思いますし、名勝地じゃないですが新たな人気スポットになればいいなと思います」