【感染症ニュース】新型コロナ全国定点3.89(12/9-15)着実に増加・不安な方はワクチン接種を 医師「非mRNAワクチンも」
国立感染症研究所の2024年第50週(12/9-15)速報データによると、の新型コロナウイルス感染症の全国の定点当たり報告数は3.89。前週の3.07から増加しています。2024年秋以降の流行では、第45週(11/11-17)を最小値として、翌週以降、増加傾向となっています。 都道府県別にみると、北海道(11.93)・岩手県(10.51)・秋田県(9.29)・青森県(6.26)・山梨県(6.10)・長野(6.03)・福島県(5.91)・群馬県(5.81)など、東日本で患者報告数が多くなっています。現状について、感染症に詳しい医師を取材しました。> 【2024年】12月に注意してほしい感染症!インフルエンザの動向に要注視マイコプラズマ肺炎は過去最多を更新医師「首都圏は伝染性紅斑に注意」 ◆感染症に詳しい医師は… 感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「新型コロナウイルス感染症の患者報告数が着実に増加しています。インフルエンザが、急激に増加しているため、そちらに目が行きがちですが、新型コロナの増加にも目を向ける必要があります。国立感染症研究所の全国のゲノムサーベイランスによる系統別検出状況(2024年12月18日時点)によると、現在、主流のKP.3系統及び亜系統は、55.88%と依然、高い割合で検出されているものの減少傾向にあり、代わって、新たな変異株XEC系統及び亜系統が22.85%を占め、その割合は増加しています。XEC株はこれまで流行してきたJN.1株からの派生株ではありますが、免疫逃避力と伝播力に優れていると言われており、冬の流行の中心となる可能性が高いと考えています。実際、私の勤務先では、新型コロナでの入院も増加しており、インフルエンザでの入院と合わせ、病床がひっ迫しつつあります。年末年始は、暦の関係で、休診している医療機関も多く、一部の医療機関に負荷がかかることも、じゅうぶん考えられます。新型コロナワクチンについて、mRNAワクチンの副反応などから、抵抗感を感じる方も、一定数、いらっしゃると思います。しかし、国産・非mRNAワクチン(組み換えタンパクワクチン)の接種も可能な状況にあります。自分に合ったワクチンを選択するといいでしょう。私は、今回、組み換えタンパクワクチンを接種しました。新型コロナウイルス感染症は、例年、年末から、年明け頃から大きな流行がみられます。健康に不安を感じる方は、ワクチン接種を検討してみてください」としています。 ◆新型コロナウイルス感染症とは? 新型コロナウイルスは感染者の口や鼻から、咳・くしゃみ・会話のときに排出されるウイルスを含む飛沫、またはエアロゾルと呼ばれるさらに小さな水分を含んだ状態の粒子を吸入するか、感染者の目や鼻、口に直接に接触することにより感染します。一般的には1メートル以内に近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分で混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。感染すると2〜7日の潜伏期間のあと、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、咳といった上気道症状に加え、倦怠感・発熱・筋肉痛・頭痛といった全身症状が生じることが多く、その症状はインフルエンザとよく似ています。オミクロン株が主流となった現在は、嗅覚・味覚障害の症状は減少しています。軽症の場合は1週間以内に症状が軽快することが多い一方、発症から3か月を経過した時点で何らかの症状が2か月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかない場合には、罹患後症状(後遺症)の可能性を考える必要があります。 ◆新型コロナウイルス感染症関連死亡例は、年間約5〜6万人 厚生労働省では、COVID-19関連死亡数について公表しています。それによると、新型コロナウイルスが、最も死亡に影響を与えて亡くなった例が、2022年は約3万4千人、2023年は約2万5千人。また、新型コロナウイルスが直接の死因には関係していないが、影響を及ぼして亡くなった例が、2022年は約2万6千人、2023年は約2万4千人いました。合計すると2022年は約6万人が、2023年には約5万人が新型コロナに関連して亡くなっています。 安井医師「これほど死亡例の多い感染症は、国内には他にありません。2023年5月に5類感染症になったことから、インフルエンザなど他の感染症と同じような印象を持たれる方も多いと思いますが、社会の一部の声を鵜呑みにすることは危険と考えています。特に高齢者、基礎疾患のある方にとって、新型コロナウイルスは命に関わる感染症です。また後遺症に苦しまれている方もいらっしゃいますし、引き続き感染対策や臨床現場での治療は高い意識を持って臨むことが重要であると考えています」 ◆冬場は部屋の換気を忘れずに! 新型コロナウイルス感染症とともに、インフルエンザも流行拡大の兆しがあります。予防の一つとして、部屋の換気があります。寒くなりましたが、定期的に部屋の空気を入れ替えるよう心がけましょう。 引用 国立感染症研究所:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)速報データ第50週(12/9-15) 全国のゲノムサーベイランスによる系統別検出状況(2024年12⽉18⽇現在) 取材 大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏