宮内庁が管理する「天皇の宝物」が公開…「正倉院展」が“異様なほど”人を集められるワケ
虫干しがてら宝物の点検…合理的な展示
さて、正倉院ができてから、約1300年の月日がたった現在、正倉院には9,000点以上の宝物が保管されています。聖武天皇ゆかりの宝物、そのほか奈良時代の宝物が多いのですが、のちの為政者が自分の宝物を寄進する、また東大寺が仏具を寄進するなどして、増えていったのです。 正倉院は宮内庁が管理しており、毎年秋に虫干しがてら、倉庫の錠にかけてある勅封をほどき、錠をあけて倉庫の扉を開きます。そして2ヵ月間、虫干しと宝物の点検を同時に正倉院展として一部の宝物を公開するのです。 1300年のあいだには、まず為政者が天皇から侍に変わるなど、日本では争いが繰り返されてきました。数々の人物が権力を握ってきましたが、どの権力者も、正倉院の宝物は私物化せずに、後世に残したのでした。世界の歴史を見ると、戦いに勝った新しい為政者は、以前の為政者の宝物を破壊するか、自分の懐に入れるのが当たり前の行動パターンです。 しかし日本の為政者は、誰も私物化しなかったのです。厳密にいえば、足利義政や織田信長などは、正倉院宝物では香木を削りとったり、東大寺の僧侶が泥棒に入ったりしたこともあるようですが、聖武天皇のコレクションの多くはいまも現存しており、1300年が経っても残っているのはとても珍しいことです。 「二度と見られないかも」というレア感 現在、正倉院の宝物は9,000点にも上りますが、正倉院展で実際に展示されるのは100点もありません。毎年9,000点の宝物のなかから選ばれた数十点だけが公開されるのです(今年は57点を公開予定)。ということは、全部の宝物を見るには100年以上かかる計算になります。 宝物にも人気度、レア度があり、人気の宝物は周期的に出展されますので、100年は少しおおげさですが、それにしても毎年公開されるラインナップは異なるので、「見逃してしまったら同じ宝物はもう二度と見られないかも……」とたくさんの人が押し寄せるわけです。ちなみに、混雑を緩和するため、数年前から日時指定のチケット制に変わっています。