後輩GKの一発レッドで50分間の緊急出場…帝京大可児3年生GK緒方琉太が気迫、気迫の好セーブ連発「胸を張って帰ろうと思います」
[1.2 選手権3回戦 帝京大可児高 2-3 前橋育英高 駒沢] 開始早々に0-2のビハインドを負いながら、怒涛の2ゴールで追いついた帝京大可児高だったが、前半33分に窮地に追い込まれた。最終ライン裏に抜けてきたボールにGK水野稜(2年)が飛び出すも、MF平林尊琉(2年)をファウルで倒してしまい一発退場。残りの約50分間を10人で戦うことを強いられた。 【写真】「イケメン揃い」「遺伝子を感じる」長友佑都の妻・平愛梨さんが家族写真を公開 本来であれば大量失点も覚悟しなければならないシチュエーション。しかし、そこで食らいついたのが最終学年を控えの立場で過ごしてきたGK緒方琉太(3年=FCフェルボールテクニコ)だった。 交代の瞬間に小さく「よっしゃ」と気合を入れた緒方は、夏のインターハイ2回戦・桐光学園高戦以来の緊急出場。「去年の選手権で負けて、そこからあまり自分の力が出せず、ずっとベンチにいることのほうが多かったけど、腐らず、自分が出た時に100%でやってやろうという気持ちでやっていた」。その努力を示す機会が全国の大一番でやってきた。 決して「ずっと一緒に自主練とかをやっていてリスペクトしている」という後輩のアクシデントを望んでいたわけではなかった。それでも一人のサッカー選手として、何より一人のゴールキーパーとして、自らの力が必要とされる状況には胸が躍った。 「前橋育英と試合が決まった時からワクワクしていて、その時はまさか自分が出られるとは思っていなかったけど、交代の時からずっと楽しかったです」(緒方) 充実の表情でゴールマウスに立った緒方は直後、押し寄せる前橋育英のシュートにスーパーセーブを連発。「最初のビッグセーブで結構乗れた感じでした」。胸の奥にはインターハイで敗れたPK戦の無念。「それがあったからこそ、ここまで悔しさを忘れずにやってこられた」。味方の追加点がなくても、せめてPK戦でのリベンジにつなげようという気迫を前面に相手シュートに立ちはだかり続けた。 しかし、最後は同じように気迫の乗った相手スーパーサブの一発に屈した。後半36分、前橋育英FW中村太一(3年)が振り向きざまに放った右足シュートに対し、懸命に反応したが、ボールに触れることはできず。試合後、緒方はすがすがしい表情で取材に応じながらも「最後に触れなかったのが悔しい」と本音をにじませた。 それでも最後は「ここまでやってこられたので悔いはない」と気丈に前を向いた。 普段は自営業でなかなか応援に来られない家族も、この日は正月三が日で駒沢に訪れていたといい、ピッチに立つ姿で「感謝しかない」思いを伝えられた。何よりここはずっと夢だった選手権の舞台。「この舞台を目標にやってきたので、アクシデントがありながらも出られたことは胸を張って帰ろうと思います」と言い切った。 卒業後は愛知学院大に進学し、東海学生リーグ1部で新たなスタートを切る緒方。「4年間サッカーを楽しむことを意識して、人としても成長していきたい」。そして後輩の水野に向け、心からのエールを送った。「彼が長年ずっと帝京大可児が越えられなかったベスト16の壁を越えて、日本一に導いてくれると思います!」。次はこの悔しさを乗り越えた2年生GKがさらなる成長を遂げ、全国でよりたくましくなった姿を見せつける番だ。