息子2人が不登校になった医師、対処わからず「気持ちどん底」 妻に気づかされた息子の心情 #令和の子 #令和の親
「無理に行かせてもしょうがない」
再登校にこだわっていた気持ちは、さまざまな出来事をとおして変化していきます。最初にハッとしたのは、近所に住む不登校の兄弟を持つ妻のママ友の言葉でした。 「『無理に行かせてもしょうがないからね』との言葉で、学校に戻すことだけに必死になっている自分に気付きました」 学校に合わない子もいる。息子に接する中で薄々気付きつつあったことが、この言葉で腑(ふ)に落ちたといいます。自身は学校に適応していたからこそ、そうでない子がいるという事実をなかなか理解できずにいたのでした。 また、世の中の変化に気付いたのも、登校へのこだわりを手放せた一因となりました。 「有名な大学に入ることが正解とは限らないことや、職業も昔とはずいぶん変わっていることを痛感しました。不登校を機に、先進的な教育者の著書を読んだり、将来の選択肢を調べたりする中で、世の中が変わっていることに気付けたのです」 自分が乗ってきたレールは、偶然自分に合っていただけなのかもしれない。正しい場所に導いてくれると信じていたものへの疑問が生まれました。その結果「自分の成功体験を子どもに押し付けていた」ことに気付いたと振り返ります。
妻の察知力に驚かされる
子どもたちへの関わり方も変わりました。 「以前は、自分の成功体験に固執して、息子たちにいろいろと干渉していました。今は、気にかけながらも、何も言わないようになりましたね」 良かれと思ってのアドバイスも、子どもにとってはプレッシャーにしかなっていなかった──。度重なるやり取りで痛感したからこそ、少しずつ自身の行動が変わったといいます。 一方で「妻は、そのようなことはとっくにわかって行動していた」そう。アドバイスこそしないものの子どもへの理解は深く、何度もかにーじゃさんを驚かせました。 「長男の、通信制高校の初めての試験前日のことです。私には長男の様子はいつもどおりに見えましたが、妻が私に『明日は試験を受けに行けないかも』と言い、実際そのとおりになったんです」 自分は感じ取れなかった息子の心情を、敏感に察知した妻。それを目の当たりにしたこともあり、かにーじゃさんは口出しをしないようになりました。 後に長男は、通信制高校への入学を機に不登校を脱していきましたが、その通信制高校への進学をすすめたのも妻だったといいます。 「これは、無理に登校を勧めなかった妻が、唯一提案したことでした」 現在、通信制高校3年の長男は受験生。美術系大学への進学を目指しています。中学3年の次男は、不登校が続きながらも通信制高校への進学を視野に入れつつあるそう。YouTubeの教育系チャンネルで勉強を始めるようにもなりました。 しかし、再登校や、自身の成功体験へのこだわりを乗り越えてもなお、苦しんだことがあります。それは、思わぬ「周囲の無理解」でした。