【児童精神科医が解説】「なんでウチの子、こんなにヤル気がないのか…」普通に見える“境界知能の子”が感じる生きづらさ
知的障害と平均域のボーダーである知能指数(IQ)「70以上85未満」は「境界知能」と言われ、日本人の約7人に1人が該当する。こうしたグレーゾーンの子どもたちは、周囲からはほとんど気づかれないため、適切な支援が受けられず見過ごされがちだ。ここでは「すぐに諦めてしまう子」「行動が遅い子」「忘れ物が多い子」の3例を挙げ、これらの対応策を解説する。本稿は、宮口幸治『イラスト図解 境界知能&グレーゾーンの子どもの育て方』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● CASE1「すぐに諦めてしまう子」 話をする分には普通だが…… ドリルや問題集を渡しても「自分には無理」と投げ出したり、新しい遊びや本などを勧めても関心を示さなかったり……。そんな様子を見ると、「なんでうちの子はすぐに諦めてしまうんだろう?」と心配になる保護者は多いはず。 しかし、諦めが早いように見える子の背景には、境界知能やグレーゾーンが隠れている可能性があります。境界知能やグレーゾーンの子どもたちは、話をしたり遊んだりする分には、ほとんど普通の子と見分けはつきません。むしろ好きなことに関する記憶力が高いこともあります。親が熱心に教えたり学習塾に通わせたりすることで、小学校の成績はそれほど悪くなく経過し、判明しづらいケースも多いです。 この子たちは言われたことは大体できるものの、いつもと違うことや予想もしない問題が起こったりすると、うまく対処することが苦手だったりします。授業を聞いて理解できなくても、「わからない」と言うのが恥ずかしくて、最初から投げ出してしまうことも少なくありません。 つまり、最初から諦めが早いというよりは、できないことから自分を守るために、取りかかる前から「自分には無理」「やりたくない」と消極的な言葉を口にしてしまっている可能性があるのです。
● 「すぐに諦めてしまう子」の対応策 境界知能の疑いがあるときはどうするべき? 大雑把な目安ではありますが、境界知能の子どもの発達年齢は、同年齢の平均的な子の7~8割程度だと言われています。仮に小学2年生の8歳の子であれば、だいたい6歳ほど。幼稚園児が小学2年生に混ざっているようなものなので、勉強に困難を感じる子が多いです。 もし子どもに境界知能の疑いがあるなら、保護者がすべき対応策は「まだ小さいから様子を見よう」と静観するのではなく、早い段階からアクションを取ることです。 境界知能の子は、苦手な部分があっても、トレーニングである程度伸ばせる可能性があります。自治体の教育センターや発達に詳しい専門家に相談し、子どもの状態や特性を把握し「アセスメント」(次ページの図参照)してもらいましょう。そして、学校側と一緒に、今後の具体的な対応策を検討してください。 もうひとつ大切なのは、子どもに対して前向きなサインを送り続けることです。具体的には、まず本人が自信を持てる何かを見つけてあげることです。 もしその子に得意な科目があるのなら、日ごろから得意分野についてほめる機会をつくったり、本や図鑑などを渡して積極的に勉強に取り組める環境を整えたりすると自信を育てることにつながります。