異色京大卒の山西 20km競歩で初金メダルも笑顔なき理由
鈴木雄介の50kmに続き、20kmも勝ち、男子競歩は「ダブル制覇」となった。女子20km競歩も岡田久美子(ビックカメラ)が6位、藤井菜々子(エディオン)が7位と「ダブル入賞」を果たしている。昨年の世界競歩チーム選手権でもシニア男子20kmと同50kmは「団体金メダル」に輝いており、戦力は充実。日本陸連科学委員会との「暑熱対策」もうまくいっている印象だ。 山西は男子50km競歩に出場した鈴木雄介からもアドバイスを受けており、暑さ対策も万全だった。 「保冷剤みたいなもの」(山西)という白いネッククーラーを首に巻き、レース中は新しいものに何度も替えた。ペットボトルの水を肩などにかけて身体を冷却して、手には氷を持ってレースを進めた。「暑さはかなりのもので後半はお腹にズシンと来るような感じはありました」と言いながらも、最後まで崩れなかった。 山西は京都・堀川高を卒業後、京大工学部物理工学科に現役合格。高校時代から世界で活躍してきた。13年世界ユース1万m競歩、17年ユニバーシアード20km競歩で金メダルを獲得。愛知製鋼に入社後は、今年3月の全日本競歩能美大会を世界歴代4位&日本歴代2位となる1時間17分15秒で制すと、同6月の競歩GPラコルーニャ20km競歩で日本人初優勝。ワールドランキングは3月19日発表時からトップに君臨する。ドーハ世界陸上で金メダルを獲得したことで、日本陸連の規定を満たして東京五輪の代表に内定した。 身長164センチ、体重54キロ。黒縁メガネのビジュアルはインテリジェンスを感じさせる。京大卒の金メダリストとなった感想を聞かれると、「(ベルリン五輪の男子三段跳びで金メダルの)田島直人さんがいるので、二番煎じですよ」と報道陣を笑わせた。 「来年、もう一度勝てるようにというよりは、より圧倒的な勝利ができるようにチャレンジしていきたい」 金メダリストの笑顔なきドーハのミッドナイト。来夏の東京では、完璧なレースを遂行して、“スマイル・モーニング”が迎えられることを期待せずにはいられない。 (文責・酒井政人/スポーツライター)