【ロエベ】【ディオール】夏の終わり、香水を衣替えするならば
今年の夏は、暑かった。9月に入っても暑かった。しぶとく湿気と熱気は居座るようだけれど、次の週末には30℃を切るという予報を耳に、フレグランスも秋準備。 【写真】 夏の終わりにぴったりな香水をもっと見る
ミネラルでフルーティ。ロエベの「アース」最新作が、秋の始まりにちょうどいい
この夏、海に行きましたか? 私は海辺に行く機会が2回ありました。庄内から望む日本海と、ポルトガルから見渡す大西洋。ともに盛夏だったので潮の香りも元気モリモリ、熱量も充分でした。季節は巡り、9月も中盤を超え、夏の終わりの波打ち際にぴったりのフレグランスと出会いまして。それがロエベのアース エリクシールです。 既存の香りのロエベ アースより、高濃度のエッセンシャルオイルが配合された「濃い口」バージョンです。濃度はアップしたけれど、青々しい洋ナシの幕開けは爽やか。同時にウードの主張と、トリュフのグルマンな味わいを遠くに感じます。その馥郁としたリッチ感がエリクシールの魅力。続く中盤に、エレミ樹脂のスパイシーでウッディな渋みが追いかけてくるのですが、不思議なミネラル感や土っぽさそしてシーソルトのような余韻があって、潮風の名残を連想するんですよね。海水浴を楽しむ人たちで賑わったあとの、誰もいなくなった渚が、脳裏に浮かびました。 濃度が高まったのと相対的に、熱気が過ぎ去った夏の終わりにふさわしいフレグランスだと感じています。ミドルに仕込まれたミモザとスミレがほどよい華を添えて、力強いけれどやさしいドライダウンを演出。そして、香りの持続力も充分。とにかく暑かった夏の思い出を反芻しながら、新しい季節に向かっていく移行期の今こそ、爽やかで少し「しょっぱい」香りがぴったりだと思うんです。
ディオールの「グレー」が深く、モダンに進化
ディオールのグレーを表現するとき、私は「ハトの首筋あたりの色!」と説明しています。孤高の品格があるけれど、冷たくないグレー。深みとあたたかみのあるグレー。グランヴィルの生家やアヴェニュー・モンテーニュのブティックのファサードを彩った、メゾンを代表するシグニチャー・カラーを冠した香り「グリ ディオール」に、フランシス・クルジャンが挑みました。 インハウスの調香師の役割には、時代の試練に負けないように既存の香りを刷新させる、という大仕事も含まれます。「メゾン クリスチャン ディオール エスプリ ドゥ パルファン」という新シリーズで、パフューム クリエイション ディレクターのフランシス・クルジャンは、すでに完成している5つのディオールの香りに、現代的なミニマリズムの哲学を軸に再解釈を加えました。 オークモス+シスタスラブラタム+ベルガモット。シプレを成すのはこれらだけれど、シプレアコードにあって、甘み際立つ、パワフルなシプレフローラルとして進化しています。バラの輪郭をくっきり際立たせた印象。甘みがあるけれど、より骨太なんですよ。オリジナルのキラキラとした軽やかさを、モダンで色っぽい重厚感に置き換えた、そんなイメージです。 チャウヌさんが白のラベルの既存の「グリ ディオール」を愛用しているけれど、こちらの黒のラベルのバージョンも、もちろん男性が付けても素敵。エレガントなブルガリアンローズがきりっと語り掛ける一方で、インドネシア産パチョリ×アトラス産シダーのブレンドにより、まろやかなウッディの香り立ちが身体を包み込む――初秋の澄んだ空気に似合いそうな、かっこよくて贅沢なシプレフローラルが完成しました。 気持ちをスイッチするきっかけとしての、香水の衣替え。皆さんの秋のフレグランス支度も、ぜひ聞いてみたいです。 【エディターIGARASHI】