2029年に2200億円まで市場拡大の予測も、「宇宙デブリ除去」で世界から注目を集める日本の技術のすごさとは
■ 静止軌道のデブリは墓場軌道に上げる 低軌道と並んで静止軌道(Geostationary Earth Orbit, GEO)にもデブリが多い。赤道上の高度3万6000kmの軌道を東に向かって宇宙機が航行するとき、その宇宙機が地球を周回する周期と、地球の自転速度が同期するため、地表から見ると空の一点に留まって見える。 この軌道は通信や放送、気象衛星などにとって都合が良いため、高度と傾斜角(赤道に対する軌道の角度)が限定されたその軌道上には多くの静止衛星がひしめき合っている。 しかし、その高高度にある衛星の運用を停止する際、大気圏で焼却しようとすれば強力な軌道離脱噴射を行う必要があり、大量の燃料とコストも必要となる。そのため静止軌道にある衛星を廃棄する際には、静止軌道からさらに300kmほど高い軌道に移してから機能を停止するのが一般的だ。そうした軌道はスーパーGEO、または墓場軌道と呼ばれている。 アストロスケールが開発する燃料補給衛星「APS-R」は、静止衛星に燃料を補給する。これによって静止衛星の運用期間を大幅に延長することができ、打ち上げコストを大幅に低減するとともに、デブリの発生率を抑えることができる。 こうした静止軌道上での燃料補給は、米ノースロップ・グラマンが2020年に「MEV-1」、2021年に「MEV-2」で成功させているが、他の事例はまだなく、そこには広大なマーケットが広がっている。
鈴木 喜生