『クロマグロ問題』の『本当の病巣』/ 魚が『ニッポンの海だけ』居なくなる!
キーワード『成長乱獲』ごく当たり前のことから目を背ける日本
大西洋では30kg未満のクロマグロの漁獲は、資源管理の制度により原則禁止です。一方太平洋の場合、もっとも漁獲量が多いのが、その約8割を占める日本の漁獲量です。しかもその約4割もが30キロ未満の未成魚なのです。これを尾数比にすれば後述しますが、太平洋全体の年齢別比率からして漁獲の9割以上が未成魚となっていることでしょう。 小さな魚を獲ってしまえば、魚は成長する機会も、産卵する機会も奪われてしまいます。その結果魚は減り続け、かつ大きな魚はほとんどいなくなってしまいます。 この状態が、日本をめぐるクロマグロ漁の大きな問題なのです。 国際合意による規制の結果マグロ資源は回復傾向にWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)という国際会議が毎年開かれています。これはマグロなど回遊性の高い資源を保護するために設立された組織です。その中でクロマグロの漁獲枠が国ごとに決まりました。2021年に決定された漁獲枠の数量は、12,334トンでその内で、我が国の配分は9,621トンと実に78%を占めています。 この漁獲枠は、日本のサンマ、スルメイカ、サバなどで資源管理に効果が出ていない獲り切れない枠と異なり、実際に漁獲ができる数量より小さく設定されています。 <編集部注釈>TAC(水産資源の維持を目的として、特定の魚種ごとに捕獲できる総量を定めた制度)というものがあり、サンマをはじめ獲りきれない数量に設定されている魚種が大半で、無尽蔵に捕獲したところでその規制量には届かない『ザル』状態。端的に言えば、資源管理に全く役に立たない数字が設定されています。これも問題として指摘されています。 このため、それまで目いっぱい漁獲されていたクロマグロが、漁獲を逃れて、成長したり産卵したり機会を与えられ、ようやく資源が少しずつ回復傾向にあるのです。 この国際的な合意で、各国は国別の漁獲枠を遵守せねばなりません。その中で、釣りについてもキープしてよいトータルの数量が決められました。その数量を超えてしまうため、釣れている最中なのに、釣りが一時的に禁止になるということが起きているのです。 ここで、クロマグロ釣りに詳しい方の中には、釣りの配分が少ないという不満をお持ちの方もいることでしょう。その通りなのですが、さらに俯瞰してクロマグロ釣りのことを考えていただきたいと思います。