「X線天文学」で見抜く、元素の起源と宇宙の進化
◇X線天文学の技術は、宇宙での資源探査や医療への応用も期待できる X線天文学は、観測衛星の開発を行うため、宇宙産業などとも関わりの強い分野です。すでに大学で小型衛星を開発し、宇宙観測をはじめているところもあるなど、さまざまな研究者たちが関わっており、技術の応用も期待されています。 たとえば天文学で使っている装置を、月の資源探査に活用できないかと考えている人もいますし、そもそもレントゲンにも使っているX線による観測技術の向上が、医療の発展に生かせるのではと研究している人もいます。我々自身は、宇宙を見るために可能な限りいいものをつくろうとしていますが、その技術を社会のその他の分野や業界に還元できる可能性も十分にありえます。目的は違えど、生きるところは多種多様なのも面白いところです。 宇宙の開拓という意味では、これから 10~20年のタイムスケールで、月や火星などへの人類の進出が始まってくると思います。また、天文学的な視点で言うと、太陽はあと50億年ぐらい経つと必ず死ぬので、人類はいつか太陽系の“外”に出ていかない限り、滅びてしまいます。社会や人類が発展していくには、天文学、そしてより広く宇宙科学全域の発展が欠かせないでしょう。 生命に必要な元素が、どこでどれだけできたのか、人類はまだ知りません。宇宙誕生から今までの歴史を含め、どう供給され、どう太陽系をつくりだし、どう取り込まれて地球が誕生したのか。多くの分野をつなげて考えなければならないので、非常に難しいですが、各分野の人たちが手を取り合いながら理解していけば、解明に近づいていけるはずです。
佐藤 寿紀(明治大学 理工学部 専任講師)