「4年生のために……」戦い抜いた3年生キャプテン・前田凌吾 早稲田を全勝優勝に導いた、ミドルブロッカーと磨き上げた1本
夏に訪れたチームの転機
チームとしてどう戦うべきか。そのために、今克服すべき課題は何で、どんなトスが望ましいのか。麻野と前田だけでなく、松井泰二監督や本間隆太コーチも交え、夏合宿の期間はVリーグ(現・SVリーグ)チームの胸を借り、うまくいかないことは徹底的に話し合う。苦しく、悩む時間も多かった、と明かしながら前田は「夏がチームにとっての転機になった」と振り返る。 「レベルの高い相手とたくさん試合をさせてもらって、苦労しながらも自信がついた。何より、自分たちがやるべきこと、それぞれの役割は何か。松井先生や本間さんともたくさん話をしていく中で、僕自身も自分のやるべきことが見えてきたし、一人ひとりがそういう意識を持つことでチームもまとまってきた。その形が、やっと秋になってつながりました」 そしてもう1つ、前田にとっては大きな変化と支えもあったと明かす。 「4年生の存在です。(浅野)翼さん(4年、東北)とか、(馬渕)純さん(4年、県岐阜商)がいろいろ話してくれて、やりやすい環境をつくってくれた。4年生は優しい人ばっかりだから、チームを本当に支えてもらいました」
夏合宿前に前田が新主将に
夏合宿を前に3年生ながら前田が主将に就任した。春季リーグや東日本インカレでもゲームキャプテンを務めてきたが、監督、コーチや3、4年生で話し合い、前田の主将就任が決まった。レギュラーメンバーとして出場する選手も下級生が多い代とはいえ、主将になれば伴う責任の大きさは段違い。覚悟を決めて臨んだとはいえ、自分のやりたいことを突き通すだけではチームがまとまらない。 悩み、迷う前田の支えになったのが浅野だった。練習メニューを考える際にも「もっとこういうメニューを入れたほうがいいのではないか」と相談すれば、すべて受け入れるばかりでなくいいものはいい、必要ないものはいらない、とジャッジしてくれた。そのやり取りができるだけでも、自分のやりやすい環境がつくられていた、前田はそう言う。 「僕は僕で、今の課題はこれだと思う、と言えば確かにそうだ、と話しながらじゃあどうやって進めるか。具体的に話もしたし、ちょっと違うでしょ、とぶつかることもあったけれど、その都度コミュニケーションが取れたから、ここまで来ることができた。試合に出ていなくて、ベンチに入っていなくても4年生が声を出してくれたり、見えないところでチームのためにいろんなことをして、助けてくれていたので、本当に僕は助けられた。この秋リーグは自分のためだけじゃなく、4年生のために、という思いを持って戦いました」