本田圭佑が問題視「指導者ライセンス意味ない」は本当か?「日本のライセンス授業とは違う」“世界最難関”イングランド監督ライセンスを持つ初の日本人が証言
「3日間でシステム変更の練習をするか?」
もちろんサッカーに関する課題もたくさんあった。 「土曜日にプレミアリーグ、水曜日にアウェイでチャンピオンズリーグがあり、その間にシステム変更をしたくなったとします。移動もある中、3日間しかない。あなたならいつシステム変更の練習をしますか? 練習せず、ミーティングで説明だけして臨みますか? と問われました。 ニッキー・バットが『俺は現役のときにそんな状況でシステム変更の練習をしたことがない。試合の中で選手の判断に任せるべきだ』と答えると、他の選手が『自分はそういう経験が1回ある』と反論しました。最終的にグループ内で意見が一致したのは、練習をするかどうかではなく、いかに選手がタスクを理解するかだと。 5年後に各ポジションで必要となる技術と戦術を予測するという課題もありました。おもしろいのは約10分で答えを出さなければならないこと。スピード感が大事にされていました」 監督業に直接生かせるかはわからないが、カリキュラム全体に先進的な空気が漂っていることは間違いない。こういう授業であれば受けてみたいと感じる人も多いのではないだろうか。
「じつはUEFA内でも互換性が揺らいでいる」
しかし、一方でヨーロッパのすべての国がイングランドのような発想をしているわけではない。国によって大きなムラがあるという。 「国ごとにカリキュラムの内容や質が異なるため、ヨーロッパでは『どこの協会でプロライセンスを取ったか』を問われるようになっています。手前味噌になりますが、最も高く評価されているカリキュラムのひとつがイングランドサッカー協会の講習です。 日本ではAFC(アジアサッカー連盟)とUEFA(ヨーロッパサッカー連盟)のライセンスの互換性がよく議論されていますが、そもそもUEFA内における互換性すら揺らいできているのが現状なんです」 こういう話を聞くと、ライセンス制度を疑問視している人の声がますます大きくなるのではないだろうか。協会ごとにカリキュラムの質にばらつきがあるのなら、連盟内の共通の資格とすることに無理が生じるからだ。 協会に独占させず、私立機関にもライセンス発行権を与え、「あそこで学んだら監督の職を得やすくなる」といった競争を促した方がサッカー界の発展につながるのではないだろうか。 人口1億2000万人の日本において、年に1度、20名のみが1カ所でしかS級ライセンスを取得できないのはやはり健全ではない。 子供たちの指導に関しては、公立機関と私立機関が両方あるのが当たり前である。なぜプロライセンスの指導は公立機関が独占しているのか。FIFAは時代の変化に合わせて規制を緩和すべきだろう。 <前編から続く>
(「欧州サッカーPRESS」木崎伸也 = 文)
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