本田圭佑が問題視「指導者ライセンス意味ない」は本当か?「日本のライセンス授業とは違う」“世界最難関”イングランド監督ライセンスを持つ初の日本人が証言
「私たちはサッカーを教えません」
まず高野が驚かされたのは、イングランドサッカー協会が約20年間にカリキュラムを4度も大きく改訂していたことだった。 「彼らがよく言うのは『サッカーは時代の流れを超えられない』ということ。社会の中で育ってきた子供たちがプロ選手になる。つまり社会の変化と無縁ではいられません。 以前はトップダウンの『縦式のコミュニケーション』で問題ありませんでしたが、今は子供たちの変化によってフラットな『横式のコミュニケーション』の方が伝わりやすい。リーダーがいながらも、いろんな情報やアイデアを共有して、風通しが良い組織が求められるようになった。イングランドサッカー協会はしっかりそこに着眼したカリキュラムを用意しています」 イングランドサッカー協会は先進的な取り組みをしているという自負があるのだろう。カリキュラムが始まるにあたり、講師が「私たちはサッカーを教えません」と宣言したという。 「彼らが日本の講義内容をどれだけ把握しているかわかりませんが、『日本のライセンスの内容はサッカーを分析し、研究してつくったものだ。それに対して私たちの内容は経験からエッセンスを抽出したものだ』と言っていました。自分たちはサッカーを教えるのではなく、サッカーの教え方を教えるんだと」
救急ヘリ「1日5回限定」どう選ぶか?
授業は与えられたテーマについてディスカッションする形式が基本だ。さまざまな専門家をゲストに呼び、「リーダーシップ、マネジメント、デシジョンメイキング(意思決定)」という3つの能力を伸ばそうとする。 たとえばロンドン市の救急隊員を招いた際には、次のような授業が行われた。 「ロンドン市内では、1日に救急で出せるヘリコプターの回数が5回までだそうです。救急に電話が約3000回かかってくる中で、その5つをどうやって選ぶかというのが議論のテーマでした。 また、大規模な事故が起こって現場に駆けつけたとき、どう優先順位をつけ、どう隊員をマネジメントするかという課題もありました。人命を左右する決断を、人が押し寄せるパニック状態の中で下さなければならない。隊員の経験談から多くのことを学びました」 頭が働かないときにどうするかという授業も行われた。 「まずリーダーとして1日のどの時間帯に最も頭が働くかを考えるんですね。仮にそれが朝だとして、あまり頭が働かない夕方に会議があり、2、3秒の間に重要な決断を求められたらどうするか。そんな訓練でした。 サッカーの試合では目まぐるしく状況が変わり、その中で采配を振らなければならない。判断スピードをサッカー外のテーマで養う意図がありました」
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