『夜回り先生』と語る、子どもたちへの思い「変えられるのは未来」「生き抜いてほしい」
シンガーソングライターの川嶋あいさんがパーソナリティーを務めるラジオ番組『明日への扉~いのちのラジオ+~』(ラジオ関西、毎月第1・2週日曜午後5時~)。9月1日の放送では、『夜回り先生』こと元高校教諭の水谷修さんと、シンガーソングライターの伊吹留香さんがゲスト出演。2人の出会いや、現代の子どもたちを取り巻く環境などについて語った。 【関連】『夜回り先生』水谷修さんが語る、子育てや教育の原点「待つこと、そして、聞くこと」 水谷さんが伊吹さんと出会ったのは、2005年のこと。水谷さんの著書『夜回り先生』が舞台化された際に主題歌を担当したのが、伊吹さんだった。出会った当時、摂食障害と戦っている最中だった彼女のようすを見て、水谷さんは「会った瞬間に、僕の関わる子だな」と思ったという。 伊吹さんは、水谷さんから大きな影響を受けた1人。水谷さんの「過去は変えられない。変えられるのは未来なんだ」という言葉に、当初は「未来なんか描きたくもなかった」という複雑な胸中もあったよう。「とにかく過去との折り合いをつけたい」「トラウマをどうにかしたい」という思いを抱えていたが、次第に、「どう生きたいか思うことは自由で、そこに向かって動くことも自由。託されているんだ」と思えるようになったという。 これまでに数多くの子どもたちと触れあってきた水谷さん。「その人の人生は、その人が自ら作るべき。手伝いはできるけれども、歩くのは自分」という信念を持つため、子どもたちに「ああしろ」「こうしろ」と指示をすることはなかったという。 そんな水谷さんの嫌いな言葉は、「頑張れ」、そして、「やればできる」。その真意については、「子どもたちは生きているだけで頑張ってるんだもん。それ(生きている)だけで十分なんだから、その子たちに『頑張れ』と言うことは、『いまお前は何もしていないダメな人間だ』と言っているのと一緒で、否定になる」と断言。 「100人の人間がいれば、100通りの生き方がある」と水谷さん。「その一つひとつをそれぞれの人間が必死に生きればいい」と考えているものの、近年におけるマスメディアの普及から「価値観が共通になっていることで、『自分は落ちこぼれだ』と悩んでしまう」と憂い、水谷さんはこの状態を「自分病」と呼んでいる。 現在、さまざまな悩みを抱えるリスナーに向けて、2人はこのようにメッセージを送った。 「私はいますごく幸せなんですが、なぜ幸せなのかというと、苦しかったから。苦しかった時期があったから、すごく小さなことでもうれしいと感じられるし、人に感謝ができる。苦しんでよかったなと思うから、抱えている苦しみを苦しくないフリをしないで、苦しいときは苦しんでいいんじゃないかな」(伊吹さん) 「人の優しさとか、どんなに苦しんでいても助けてくれる人はいる。でも、心を閉ざしたり、恨みつらみを抱えたりしていると、それが見えなくなる。雲の向こうはいつも晴れでしょ。止まない雨もない。どんなに苦しくたって、生きてさえいれば明日はきます。生き抜いてほしい、それだけが願いです」(水谷さん) ※ラジオ関西『明日への扉~いのちのラジオ+~』より
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