現役ドラフト→日本S初登板…「無名の変則左腕」だったソフトバンク長谷川 中日・清水との“花咲徳栄同期秘話”
◇渋谷真コラム・龍の背に乗って 日本シリーズ特別編 ◇29日 SMBC日本シリーズ2024 第3戦 ソフトバンク1―4DeNA(みずほペイペイドーム) 3点負けているとはいえ、日本シリーズのデビュー戦である。ソフトバンクの9回のマウンドに上がったのは長谷川だった。梶原を左飛、牧を三ゴロに抑え、オースティンには四球を与えたが、筒香を一ゴロに打ち取った。 日本ハムから現役ドラフトで移籍してきた。昨季まで通算11試合登板だった無名の変則左腕は、最強軍団のブルペンに居場所をつくりだした。32試合で4勝0敗、6ホールド。防御率2・49と一角を占めたのだ。そんな彼のことをよく知る人を、僕は知っている。今は宮崎にいる中日の清水である。 「投げましたね。抑えましたね。最後の打者だけテレビで見ることができました」 侍ジャパンの合宿中。どうやらお風呂上がりだったらしい。多忙な中でも質問に答えてくれたのは、長谷川のことだからだ。1999年生まれの長谷川は、埼玉・花咲徳栄高出身。清水とは同期である。しかし、夏の甲子園の全国制覇は、アルプススタンドから見つめていた。ベンチ入りメンバーには入れなかったからだ。金沢学院大を経てドラフト6位で日本ハムに。その間も、高卒で中日に入った清水とは常に連絡を取り合う仲だった。 「大学生のころも毎年、名古屋まで遊びに来て、僕は使わない道具やシャツをあげていたんです」 エースとベンチ外。優勝投手と控え。友情を育むのはよくあることだが、ここで大切なのは長谷川は追い付き、清水より先に日本シリーズのマウンドに上がったことである。 同い年でもプロと大学生。食事代は毎回、清水が出してきた。「なんなら僕の行きつけの店に勝手に行って、僕のつけで食べたこともあるんです」。プロになったらおまえが払えよ…。つい財布を出してしまい、まだその約束は実現していない。「それを許せるのがあいつのいいところなんですよ」。あきらめずに夢を追った友の晴れ舞台を、清水は素直に喜べた。長谷川が日本一なら、自分は世界一。どちらかがやめる日まで、切磋琢磨(せっさたくま)である。
中日スポーツ