「小説を書いてみたい」小泉今日子さん、心に留め実践する後輩女優の「いつも違う道」
歌手、俳優、プロデューサーとして活躍する小泉今日子さん(58)の講演会「小泉今日子トークライブ」(読売新聞北海道支社主催)が11月26日、札幌市中央区の共済ホールで開かれた。読売新聞の書評欄「本よみうり堂」で2005年から10年間、読書委員を務めていた小泉さんが、人や本との「出会い」、歌や舞台などに対する思いを語った。来場者らから好評だった小泉さんのトークを詳報する。 【写真】書評について、記者と対談する小泉今日子さん
「小泉今日子トークライブ」詳報<2>
〈第1部「私が出会った人~時が過ぎて今~」の後半では、小泉さんが、尊敬する俳優や、書評を通じて広げていった新たな活動について語った。小泉さんには、「恩師」と慕う演出家久世光彦(くぜてるひこ)さん(2006年死去)の言葉と同じように、心に留めている後輩女優の言葉があるという〉
私が手がけた舞台を、満島ひかりさんが見に来てくださった時、出演した若い男性俳優が満島さんに「僕のお芝居どうですか。もっと良くなるためには何をすればいいですか」って聞いたんです。そうしたら満島さんは、「この劇場に来るときに、いつも違う道を通ればいいよ」って答えたんです。満島さんは後輩ですけれど、やっぱりすごいなって尊敬しました。
私は、満島さんの隣でたまたま聞いた言葉を、ずっと実践しています。劇場に向かうとき、前の日と違う道を歩くと、民家の庭先の花、風に揺れる洗濯物、気づかなかったものが「すてきだな」と思えて、着くと、自分の感受性みたいなものがふわっと広がっているような状態で、お芝居が始められる気になるんです。
〈書評をきっかけに、あこがれた俳優もいる〉
私が書評を書いた2冊目が、「沢村貞子という人」という本でした。山崎洋子さんという、沢村さんのマネジャーをされていた方が、思い出を書いた本です。書評をして改めて、沢村さんの随筆などをたくさん読み、とてもあこがれたんですね。すてきな格好いい人で。私の印象では、沢村さんはちょっとクールで意地悪な役が多かったんですけど、実はとても温かい人。それで、他の女優さんの随筆も読んでみようと高峰秀子さんの本を読むと、そこに沢村さんが出てくる。また時を経て黒柳徹子さんの随筆を読んでいたら、黒柳さんも沢村さんと親しかった。「ほら、自分の好きな人がみんなつながってる」みたいな、そういう喜びがありました。