東京を表現したウイスキー「グレンモーレンジィ トーキョー」誕生! 手がけたビル・ラムズデン博士と山口晃に聞く制作秘話
ウイスキーとアートが起こす“おいしい”化学反応
--そんな特別なグレンモーレンジィのアートワークを担当されたのが山口さんです。今回のプロジェクトはどのようなかたちで進められたのですか? 山口晃(以下、山口) お話をいただいた当初はまだ製品ができていませんでしたから、ビルさんのご経歴やビルさんが東京の街から受けたインスピレーションなど、言葉からアイデアやイメージを紡いでいきました。私がアートワークの制作を進めている最中にビルさんも製品の開発を進め、最後に答え合わせをするように完成した「グレンモーレンジィ トーキョー」を飲ませてもらいました。 --ウイスキーのラベルやパッケージとしてはとてもユニークで、素晴らしいアートワークだと思います。 ビル 私も完成したアートワークを見てまさに「グレンモーレンジィ トーキョー」だと思いました。モダンな街でありながら古い歴史も感じさせてくれたり、大都会の喧騒と静寂が共存していたり、私がイメージした東京の街のコントラストを、山口さんが完璧に表現してくださったと思います。グレンモーレンジィを象徴するディテールが散りばめられているのも楽しくて、「グレンモーレンジィ トーキョー」を飲みながらずっと眺めていたくなります。今回の素晴らしいコラボレーションは、私自身のキャリアの中でもベスト3に入るプロジェクトです。 山口 ありがとうございます。香りなどの感覚を絵にするという作業は初めての経験で、抽象画のようになるのも何か違うし、むしろ東京の街やグレンモーレンジィを象徴する意味のあるものをしっかりと鮮やかに描くことで、ウイスキーの味わいの印象や記憶と複雑に絡み合うようなアートワークになれば面白いなと考えました。また、グレンモーレンジィを味わっているといろいろな要素が現れてきます。それと同じように絵を見るたびにいろいろな発見をしてもらいたくて、「グレンモーレンジィ トーキョー」を表すヒントのようなディテールを、隠し絵のように紛れ込ませるという遊び心も加えました。 --最近はウイスキーとアートのコラボレーションが増えています。山口さんはアーティストの立場として、そうしたコラボレーションにどのような可能性を感じられますか? 山口 たとえば今回の場合、言われたものをそのまま表現するのではなく、ウイスキーに対する自分の解釈などをきちんと出したうえで、それがビルさんの解釈とズレるところに面白さが出るのではないかと考えました。私たちの左右の目が、少しづつ異なる像を見ることで奥行きを感じ取れように、そうしたズレからウイスキーに対しての新しいアプローチが生まれるといいなと。その試みが成功しているかどうかは商品を手に取られるみなさんに判断してもらえればと思いますが、ビルさんがおっしゃるようにぜひ「グレンモーレンジィ トーキョー」を飲みながらアートワークも楽しんでほしいですね。 --最後に、ビル博士から「グレンモーレンジィ トーキョー」のおすすめの楽しみ方をお聞かせください。 ビル 「グレンモーレンジィ トーキョー」では、オレンジなどの柑橘や蜂蜜を思わせるグレンモーレンジィらしいフレーバーと調和するように、ハーブやスギ、刺激的なスパイス、家具を磨くポリッシングなど、ミズナラ樽に由来する複雑なフレーバーを感じることができます。その味わいと同様にブレンドなどの製法もとても複雑で、このウイスキーは二度とつくることができません。本来であれば「お好きに飲んでください」と言いたいところですが、「グレンモーレンジィ トーキョー」に関してはやはりストレートで飲むのがおすすめです。少し加水をすると違った香味も開いてくるので、そうした複雑な香りや味わいのコントラストを、ぜひ山口さんのアートワークと合わせて楽しんでいただきたいですね。
文:西田嘉孝