台湾行政院長、原発活用に「非常に前向き」-AIの電力需要に対応
(ブルームバーグ): 台湾の卓栄泰行政院長(首相)は、人工知能(AI)ブームを背景とする半導体メーカーからの電力需要の高まりに対応するために、新たな原子力技術の活用に「非常に前向き」だと述べ、台湾政府が原子力発電への反対姿勢を再考していることを示した。
ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで17日、「台湾内に原子力の安全性および核廃棄物の処理に関する適切な方向性と保証に関するコンセンサスがある限り、われわれはこの強いコンセンサスを基に公の場で議論することができる」と指摘した。
その上で、「台湾も世界のトレンドと新たな原子力技術に追いつくことができると期待している」と話す一方、「台湾では2030年より前に産業向けの電力供給で問題は生じない」との自身の見解を改めて表明した。
卓氏の発言は、安全上の理由から原発利用に反対してきた台湾政府の姿勢が変化していることを示唆している。日本で2011年に発生した東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を受け、台湾では原発利用に対する市民の支持が急低下した。
ただAIブームにより半導体の受託生産大手、台湾積体電路製造(TSMC)など半導体メーカーからの電力需要が絶え間なく、原発への反対を維持することがますます難しくなっている。台湾は今年に入りすでに2度にわたって電気料金を値上げしており、今月には産業向けの電気料金が12.5%上昇した。
中国は約2300万人が暮らす台湾の封鎖を想定したものと見受けられる軍事演習を実施。紛争が差し迫っている兆候はないものの、卓氏ら政府高官は台湾が重要なエネルギー供給源から遮断されるリスクを検討する必要がある。
卓氏(65)は、将来的な原発導入への関心を強調し、台湾で廃炉となった原子炉の職員が仕事を続けられるよう公営電力会社に要請すると述べた。台湾では来春に最後の原子炉が閉鎖される予定。
原題:Taiwan Signals Openness to Nuclear Power Amid Surging AI Demand(抜粋)