加藤一二三・茂木健一郎『ひふみん×もぎけん ほがらか脳のすすめ 誰でもなれる天才脳の秘密』(レビュー)
猫がつくことわざは、考えなおしたほうがいい。 (9章 猫とわたくしと園遊会と より) 多いときは19匹の猫を飼っていた愛猫家の加藤さん。猫なで声、猫かぶりなど、「猫」を使ったことわざにはネガティブなものが多いことがご不満のようでした。「うちの猫は賢いし、仲間思いです」と真剣に腹を立てている姿は、かわいらしくて素敵でしたね。 神のお恵みが加わって、ある意味、成熟した将棋を指せるようになったのではないか。 (8章 わたくしのクリスティアニティ より) 敬虔なクリスチャンの加藤さん。懸命に考えて指せば、たとえ悪手でも神は喜ばれる─と思い至ってからは大胆に挑めるようになったとか。命運を神の思し召しに委ねる姿勢が、加藤さんの将棋を豊かなものにしたんですね。 あのね、たぶん、天国に将棋はないと思う。 (10章 うなぎと天国 より) 天国は、ただ、ひたすら神を賛美する世界。だから大好きな将棋もないし、大好物のうな重もないだろうと加藤さんはおっしゃいます。でも、加藤さんが将棋を指さないなんて、僕としてはちょっと寂しい気分。ぜひ100歳、110歳と長生きして、いつまでも元気に将棋を指し続けてほしいと願っています。
おふたりからのメッセージ 茂木健一郎 ほがらかで前向きな心の持ちようによって才能を開花させた加藤さん。天才脳の条件をすべて兼ね備えた方です。みなさんも本書で、自分の中に眠る天才に気づいてください。 加藤一二三 対談ではあちこち話が飛んだけれど、「天才脳は気まぐれ」と茂木先生にうかがって安心しました。自由で気ままな発想が脳を羽ばたかせるんですね。これからも私は羽ばたきますよ。
茂木健一郎 もぎ・けんいちろう 1962年10月20日東京生まれ。 脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。クオリア、AIなどを通じ人間の意識を研究。将棋や囲碁に造詣が深く、羽生善治現日本将棋連盟会長との共著もある。著書多数。 加藤一二三 かとう・ひふみ 1940年1月1日福岡生まれ。「神武以来の天才」の異名を持つ名棋士。70年キリスト教徒に。2017年6月20日に現役を引退。仙台白百合女子大学客員教授。18歳3か月でA級昇級の最年少記録は現代の藤井聡太も破れず。著書多数。 [レビュアー]茂木健一郎(脳科学者) 1962年東京生まれ。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京大学理学部、法学部を卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程を修了、理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。「クオリア(意識のなかで立ち上がる、数量化できない微妙な質感)」をキーワードとして、脳と心の関係を探求し続けている。『脳と仮想』(2004年、新潮社)で小林秀雄賞を、『今、ここからすべての場所へ』(2009年、筑摩書房)で桑原武夫学芸賞を受賞。 協力:集英社 青春と読書 Book Bang編集部 新潮社
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