糖尿病治療でよく聞くインスリン注射って何? 医師が解説するインスリン療法の効果や種類・打ち方
糖尿病のインスリン注射・インスリン療法に副作用はある? 痛みは? 使用済みの注射針はどう処分する?
編集部: 注射はどこに打つのですか? 清水先生: インスリン注射は皮下注射なので、皮膚と筋肉の間の皮下組織(脂肪)に打ちます。場所は腹部、上腕部の外側、臀部、太ももの外側などが一般的です。 編集部: 注射を打つときに痛みはありますか? 何か注意点は? 清水先生: 最近では細い注射針も開発されているので、ほとんど痛みを感じずに注射することができます。ただし、毎回同じところに注射をすると皮膚が硬くなってしまうリスクがあるので、少しずつ場所をずらして注射します。 編集部: 副作用はありますか? 清水先生: 最も多いのは、血糖値が下がりすぎて低血糖の状態になってしまうことです。インスリンが効きすぎることによって、正常の範囲を超えて血糖値が下がりすぎてしまい、放置すると意識障害の危険もあります。 そのため普段からできるだけ同じ時間に食事をしたり、補食をしたりして、低血糖を予防することが必要です。また日頃から血糖値をしっかり測定することも大事です。 編集部: ほかに、インスリン注射のリスクはありますか? 清水先生: インスリン注射は、低血糖以外副作用がほとんどありません。アレルギーが起きることがありますが、非常にまれです。糖尿病の飲み薬だと肝機能障害が起きることがありますが、注射の場合にはそのようなリスクもありません。非常に安全性の高い治療なのです。 編集部: 副作用がほとんどないのですね。 清水先生: はい。それからインスリン注射の特性として、容量に上限がないということも挙げられます。通常の薬は上限が定められていますが、インスリンの場合には血糖値の状態に応じて、どれだけ単位を増やしても構いません。 編集部: たくさんインスリンを投与して危険性はないのですか? 清水先生: あるとしたら、体重が増加するというリスクです。しっかり血糖値を下げようとすると大量に投与することになりますが、そうすると、体重が増えるという危険があります。 そのため、「インスリンを投与するから食事療法はやらなくてもいい」ではなく、「食事療法を継続しつつ、インスリンを投与する」ことが必要なのです。 編集部: 使用済みの注射針はどうしたら良いのですか? 清水先生: 糖尿病専門医のクリニックの場合、使い終わった針はクリニックが回収し、まとめて廃棄していると思います。受診のときに持ってきていただくので、ご自宅ではペットボトルなどに入れ、安全に保管してください。 編集部: 最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。 清水先生: 糖尿病の患者さんは、大抵の場合、インスリン注射を嫌がります。「面倒」「痛い」「怖い」という理由が大半で、なかには「インスリンを打ったら終わりだ」とおっしゃる方もいます。 そのため、医師にインスリン療法を促されても先延ばしにしてしまう方も少なくありません。しかし、しっかり血糖値を下げようという場合、インスリンは非常に確実な治療法です。また、早期に治療を始めれば膵臓の疲弊が改善され、インスリン療法を中止できるかもしれません。 そのため、医師からインスリン注射が必要と言われたら、できるだけすぐ始めるようにしてほしいと思います。