尹政権に「元徴用工問題」解決を急がせる「安保協力」への思惑
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日韓の関係悪化の要因となっている元徴用工問題 を巡り、韓国政府が解決案を公表した。韓国最高裁が日本企業に支払いを命じた賠償金について、韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が肩代わりするという内容だ。財団には1965年の日韓請求権協定による経済協力金で成長した鉄鋼大手ポスコなどの韓国企業が寄付金を出している。請求権協定と矛盾しない形で日本企業の資産現金化を回避する精いっぱいの案と言えるだろう。 韓国政府が解決案を示したのは、1月12日にソウルで開かれた、元徴用工訴訟に関する公開討論会でのことだった。韓国外務省の徐旻廷アジア太平洋局長は「肩代わり案」について説明した上で、日本政府に対しては「既に表明した痛切な謝罪や反省を誠実に維持、継承することが重要だ」と述べた。また、日本企業の謝罪や寄付は「事実上難しい」との認識も示し、まずは韓国側が国内意見をまとめ、それを日本側に伝えて「誠意ある呼応」を期待するとの考えを明らかにした。 ここから読み取れるのは、新たな謝罪などを出すことは困難としている日本政府の姿勢に沿う形で、尹錫悦政権が「現実的な解決策」を導き出そうとしたことだ。日本に対し新たな謝罪や資金の拠出などを明確に求めていないことから、元徴用工問題を「国内問題」として早期に決着をつけようとする、尹政権の思惑が浮かび上がる。
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佐藤大介