中国国家統計局が声高らかに「GDP4・6%成長」を発表するも、これだけの不安材料
中国経済の低迷、最大の原因
国家統計局がこの日に発表したデータを中心に、主な中国経済の最新データをまとめると、下記の通りである。 青色がやや改善された部分で、黄色が依然として低迷が続く部分である。これを見ると一目瞭然だが、コロナ禍の前にGDPの約3割を占めていた不動産の景気が回復しないことが、中国経済の低迷が続く最大の要因である。不動産の主要11統計のうち、プラスなのは「家屋・住宅の売れ残り面積」だけという有り様だ。 中国は、2020年から2022年まで3年にわたり、習近平主席の絶対命令によって、「ゼロコロナ政策」を貫いた。それによって全国の経済が悪化し、14億人の生活がおしなべて悪化した。 2022年末から、さすがに通常の生活に戻したが、翌2023年3月に3期目に入った習近平政権は、経済のV字回復を優先させるべきところを、「総体国家安全観」というガチガチの社会主義政策を前面に掲げた。これによって中国経済は、「V字」どころか「I字」と言われるほど、さらに悪化していった。
次々に経済回復策を打ち出すも…
ようやく経済回復優先に方向転換したのは、今年3月の全国人民代表大会が終わってからだ。5月に「4つの新政策」(5・17楼市新政)を出し、経済悪化の根本原因である不動産を立て直そうとした。 〇販売契約を結んだマンションの建設と引き渡しを円滑に行う。 〇商業銀行は不動産への融資をしっかり行う。 〇地方の国有企業がマンション在庫の一部を買い取り、低所得者向け住居とする。 〇ゴーストタウンを政府が買い取って転売する。 これに付随して、中国人民銀行(中央銀行)は買い取りを支えるため、3000億元(約6・3兆円)の資金枠を設けた。かつ、住宅ローン金利の下限を撤廃した。 だが、これは弥縫(びほう)策に過ぎなかった。しかも、現場の各地方政府(地方自治体)が、どう対応してよいか分からず、混乱を招いた。ある中国の経済学者は、私にこう吐露した。 「巨大な山火事が起こっている時に、消防車を4台出してきただけで、どうやって火を消せるのだ?」 私も似たような印象を持った。1978年に鄧小平副首相は、中国社会を根本から変える改革開放政策を断行した。その20年後の1998年、朱鎔基首相も、やはり中国社会を根本から変える国有企業改革を行った。それから10年後の2008年、温家宝首相もまた、世界的金融危機(リーマン・ショック)から中国を守るべく、4兆元(当時のレートで約58兆円)の緊急財政出動を決めた。 これら「3つの改革」に共通しているのは、時の政府が本気で改革を目指したことだ。実際、改革には痛みが伴い、一時は混乱に陥ったが、混乱期を過ぎると経済は急速にV字回復していった。いまから振り返ると、時の為政者たちが、確固とした信念のもとに大胆な改革を断行していった様は見事だった。 習近平政権には、こうした過去の政権のような「本気度」が見られない。前述の経済学者はこう述べた。 「それは習近平主席本人が、誰よりも緊縮財政派だからだ。世界が度肝を抜くような財政出動や金融緩和には、そもそも反対なのだ。中国人民は、一家が何とか暮らしていけるだけの収入と住む家だけがあり、『小康社会』(そこそこの暮らしができる社会)でよいではないかというのが、習主席の発想なのだ。 トップがそういう考えなので、大胆な政策など出るはずもない。結果、官僚たちは、なるべく無難に諸政策を小出しにして、習近平主席に向けて『やってる感』をアピールしているのだ」