国際結婚で複雑になる相続税…アメリカ人と結婚し海外在住となった日本人女性、所有する日本の不動産の相続税はどうなる?
国際結婚した後、日本に所有する不動産の相続税はどうなるのでしょうか。アメリカ人の男性と結婚した日本女性が所持していた不動産が米国でどう課税されるかについてみていきます。本連載では、富裕層の国際相続の諸課題について解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
国際相続の典型パターン
結婚を機に海外に居住し、所有する日本の不動産を相続するケースを見ていきます。 国際相続での典型パターンを以下の4例に分類しました。 国際相続の典型的なパターンは、図表の例4が該当します。例4は例2と類似しているようですが、相続財産の所在地が異なります。 例3は、比較的よくあるケースです。たとえば、相続人となる子弟のひとりが、国際結婚あるいは海外勤務等で外国居住者となる例です。 相続税の場合は、個別の事例が他との類似性に乏しいという特徴があります。要するに、1件ごとに内容が異なることになります。そこで、上記図表の例4の内容を肉付けしてみました。
課税の境界線は基礎控除額1,361万ドル
以下、例4に該当する事例を紹介します。 米国籍でハワイ州在住のAさんは日本の不動産を所有しています。Aさんは日本国籍で日本に居住していましたが、米国人男性Bさん(生存配偶者)と結婚して、現在はハワイに住んでいます。Aさんは、Bさんとの間にひとりの子どもがいます。 Aさんは、結婚までに、実父から相続した不動産(土地)を日本に持っていました。この土地は、実父からAさんの姉Cさんとの2人で均等に相続したものです。Cさんは、この土地に娘Dさんと暮らしています。Aさんは、ハワイに移住する前にAさん所有の土地の相続について、公正証書を作成して、Dさんに相続する旨を決めました。 なお、Aさんはハワイに預金として30万ドルを所有しています。また、Aさん所有の日本の土地の相続税評価額は3,500万円です。姉のCさんは、Aさんの相続に関して米国で課税関係が生じるかを心配しています。 この事例の場合の適用関係を整理すると、以下のとおりです。 (1)ハワイ州のプロベイト(検認裁判所が関与する手続き)の対象となるのは、米国不動産・動産、日本所在の動産ですが、Aさんは日本に動産がありません。 (2)日本法の適用となるのは日本の不動産ですが、この事例では公正証書があることから、これに基づいて相続が行われることになります。 米国の連邦遺産税は、トランプ大統領による2017年の税制改革法により、2025年までの時限措置として、基礎控除額が2倍の1,000万ドルに拡大され、さらに毎年インフレ調整が行われて、2023年は1,292万ドル、2024年が1,361万ドルと増えています。Aさんの財産金額は基礎控除額以下ですので、米国連邦遺産税の課税はありません。また米国は遺産者課税ですので、Aさんの土地を相続するDさんは課税されません。 したがって、基礎控除額1,361万ドル以上の相続財産がある場合は、課税対象になりますので、注意が必要です。