国際結婚で複雑になる相続税…アメリカ人と結婚し海外在住となった日本人女性、所有する日本の不動産の相続税はどうなる?
ハワイ州の遺産税
米国50州とコロンビア特別区のうち、相続税のある州は18あります。遺産課税方式の州は12、取得課税方式の州は5、両方式の折衷方式の州が1となっています。 ハワイ州の2023年の控除額は549万ドル(約7億7,000万円)で税率は10~20%です。連邦遺産税と州の遺産税は控除額が異なります。しかしAさんの場合、州の遺産税は課税にはなりません。
米国における遺産課税
米国では、連邦税として遺産税、贈与税および世代飛越税が統合移転税方式(unified transfer tax system)を構成し、連邦税以外に、州税としての相続税等が課される州もあります。 遺産課税は以下のように行われています。 (1) 被相続人の死亡時に、その財産を時価により評価します。なお、この場合、選択とし て、死亡した後の6月後を評価の基準日とすることもできます。 (2) 債務の控除、寄付金控除、配偶者控除等を差し引いて課税遺産額を算定します。 (3) 1976年以後の贈与税を課された財産を課税遺産額に加算します。 (4) (3)の金額に統合税率(unified tax rate)を乗じて算出税額を計算します。 (5) 1976年以後に納付した贈与税額、州税、外国相続税、統合税額控除等の税額を控除して納付税額を算定します。 結果として、Aさんの日本の不動産も米国における相続財産に含まれますが、財産総額が控除額を下回ることから、米国において連邦遺産税およびハワイ州遺産税のいずれも税額は発生しませんでした。
日本における相続税の課税
Dさんは日本において居住無制限納税義務者として日本の不動産に係る相続税の課税対象ではありますが、Aさんに係る基礎控除(法定相続人2名:夫Bさんと子ども)以下の金額であることから、日本で納税義務は生じません。 矢内一好 国際課税研究所首席研究員
矢内 一好