「ワンタッチ痴漢」という言葉に“強烈な違和感”。 犯罪をマイルドに見せる必要はあるのか
時事通信は9月5日、「相次ぐ『ワンタッチ痴漢』にご注意! 自転車で抜きざまに胸触る―警視庁」と題した記事を投稿。自転車に乗った男が追い抜きざまに女性の身体を触る事件が、東京都中野区で頻発している現状が捜査関係者への取材で明らかになったことを報じる内容だった。記事には、警視庁がこうした行為を「ワンタッチ痴漢」と呼んで捜査していることも記されていた。
SNSでは「『ワンタッチ痴漢』なんて軽々しいネーミングができるのは、実際に被害に遭ったことがないからでは?」「なんかお手軽犯罪みたいな呼称で嫌だね」など、「ワンタッチ痴漢」という表現に違和感を覚える声が少なくない。
軽いネーミングのせいで“ワンタッチ痴漢”が減らないのでは
他人の身体を触る行為は不同意わいせつ罪(旧・強制わいせつ罪)であり、れっきとした性犯罪である。SNSの多くの声が指摘する通り、「ワンタッチ痴漢」という表現はどこか危機感を薄めているように思う。 「ワンタッチ痴漢」という言葉自体は10年以上も前から使用されているが、裏を返せば未だに警視庁やメディアが「ワンタッチ痴漢」という言葉を使っているからこそ、今なお“ワンタッチ痴漢”が減っていないのではないか。
学校内の犯罪行為をまだ「いじめ」と呼ぶのか?
メディアが使用する犯罪に関わる言葉の中には、見聞きした者の危機感を削ぐ、マイルドな表現が少なくない。例えば、「いじめ」はその典型例だ。暴行罪や恐喝罪、侮辱罪などは学校内で起きると、たちまち「いじめ」という言葉で括られがち。「いじめ」と聞くと、どれだけ凄惨な暴力を受けようが、どれだけひどい言葉をぶつけられようが、どうしても“子ども同士の戯れや衝突”とイメージしやすい。 とはいえ、いじめは犯罪行為だ。2022年1月に熊本県にある高校のサッカー部で当時1年生だった男子部員が全裸で土下座をさせ、その様子をスマートフォンで撮影した上級生2人が書類送検されたニュースが報じられた。多くのメディアはこの事件を「いじめ」という言葉を使用していたが、上級生2人は強要罪で起訴されており、「いじめ」という表現が妥当なのかは疑問だ。 学校内の出来事、当事者が生徒同士だからといって、犯罪行為を「いじめ」と報じることは自重すべきではないか。