「Suica」の常識が覆る?誕生から23年、JR東日本が直面している課題
東日本旅客鉄道(JR東日本)は12月10日、「Suica の当たり前を超えます ~ Suica Renaissance ~」と題したプレスリリースを発表した。 【全画像をみる】「Suica」の常識が覆る?誕生から23年、JR東日本が直面している課題 関東圏ではお馴染みの電子マネー「Suica」だが、2001年にスタートしたこの交通系ICカードの仕組みが、来年2025年から2028年度末までに大きく変化するという。 JR東日本は2024年10月に「Beyond the Border」と呼ばれる中長期ビジネス成長戦略を発表した。 この中でJR東日本グループでバラバラに展開されていた、サービスごとのアカウントやアプリ等を統合。1つの「Suicaアプリ」としてこれまで主力だった運輸事業のみに依存しないビジネスでの成長を標榜している。 今回発表されたSuica Renaissanceでは、中長期戦略で描かれたビジネスモデルに沿うべくSuica事業の強化をうたっている。 今回は「これまでのSuicaがどう変わるのか」に着目して、そのポイントをピックアップする。
交通利用から物販へ、23年間で課題が顕在化
Suicaのサービスが開始された23年前、当時は技術的課題もあり、Suicaのような交通系ICカードは改札機と各駅の内部で基本的な処理が実行され、一定間隔で本部での集計を行うという「ローカル処理」の仕組みを採用していた。 こうした分散型の処理は通信障害などに強い反面、すべてSuicaのカード内に記録される残高情報を基に処理が行われる。 そのため、いわゆる前払い方式(プリペイド)の仕組みが必要で、利用者は事前に必要金額をカードにチャージしておき、この残高内でさまざまな処理をする必要があった。 交通利用だけであれば特に問題がなかったのだが、後にSuicaの仕組みは物販へと開放され、小売店でのタッチ決済が可能になった。 当時はまだ国際ブランドのクレジットカードのタッチ決済が存在しなかったこともあり、普段公共交通機関で利用しているカードの電子マネー残高をそのまま買い物に利用できる決済手段は手軽で便利だった。 一方で、欠点も顕在化した。 (主にセキュリティ上の理由から)Suicaのチャージ残高の上限が2万円に設定されていた。 ローカルで残高を直接引き落として処理することから、クレジットカードにあるようなオンラインでの取引チェックの仕組み(オーソリゼーション)の導入が難しかった。 取り消し処理が難しく取引のキャンセルは現金による返金が必要だった。 クレジットカードなどと比較して柔軟性に欠ける面も目立つようになった。