「来年こそ」と誓った直後の震災 朝市通り“名物”えがらまんじゅう 再開は「一歩踏み出す勇気が…」
■「もう一度まんじゅうを食べてほしい」 それでも踏み出せない
地震が起きた時、塚本さんは店から火を出さないようにと、ブレーカーを落として避難した。祖父が建てた店舗は鉄筋コンクリートのため、倒壊の心配はしていなかった。 避難先で、朝市に火の手があがったという情報を聞いた。燃える朝市を見に行った時の光景が忘れられないという。「地獄のようでした。これが現実とは信じられなかった。近くまでは行けなかったけど、ああ終わったなと…」。 塚本さんが店を見に行ったのは、それから3日ほど後。あまりの凄惨さに母親に見せるのを躊躇したという。 火事さえなければ店舗は大丈夫だったのに、という悔しさが残る。それでも「火事の原因も、消火活動も、誰も責められない。津波の恐れもあった中で誰も悪くないですよ」と気丈に振る舞う。 今は“もう一度大好きな仕事をしたい”“お客さんにえがらまんじゅうを食べてほしい”という気持ちが強い。ただ、饅頭を作る設備や作業場が残っていない状況で何ができるのか、と弱気になる時もあるという。 「一歩踏み出す勇気や思い切りが必要なんです。そこでちょっと悩んでいます」