ブレーキパッド交換時にはブレーキピストン「もみ出し」磨きが効く!!
ピストンを露出させて外周の汚れをクリーニング
1980年代の初頭から採用され始めた並行2ピストンキャリパーをクリーニングしてみた。キャリパーブラケットにはスライドピンが取り付けられている。パッドの押し付けに対して、このピンに沿ってキャリパー本体が移動するフローティング式を採用している。ブレーキレバーを何度か握るとピストンが出てくるが、必ずしも2個のピストンが同時かつ同じだけ出てくることはまず無いので、ピストン押し込みツールで片側のピストンを出ないように抑えたり、ツール爪幅を広げてキャリパー外側とピストンをタガのように挟んで出てこないように利用することもできる。ポロッと落とさないようにピストンを露出させ、ブレーキクリーナーを吹き付けてから小型ブラシでピストン外周の汚れを洗い流そう。
ブレーキピストンツールを上手に利用する方法
このピストンクリーニング作業で大切なことは、露出させ過ぎてピストンを落としてしまわないことだ。ブレーキフルードを交換するにしても、キャリパー本体内にピストンが収まっていた方が作業性は明らかに良い。単純にピストンの押し込みだけではなく、ツールを広げてボディとピストンを挟むように利用することで、ボディ形状によってはピストンクリーニングしやすくなる。
スライドピンのコンディションにも要注意
並行ピストンキャリパーには、デザイン形状こそ違ってもスライドピンが必ずあるので、分解したらピンの汚れを拭き取り、ボディ側のピン孔には綿棒を差し込んで古いグリスを除去しよう。脱脂洗浄後はグリスを塗らず、ボディにスライドピンを差し込むことで、摺動部の摩耗具合を確認しやすくなる。スライドピンを組み込むときには、適量のグリスを必ず塗布して作動時のカジリを防止しよう。この際に利用するグリスと、パッド背面やバックプレートに塗布する鳴き止めグリスは、種類が異なるので間違わないようにしよう。
新品パッドは面取り、バックプレートは洗浄後に専用グリスを塗布
新品ローターに新品パッドの組み合わせなら、パッドエッジを面取りする必要は無いが、既存ローターに新品パッドを組み合わせる時には、パッドエッジを平ヤスリで面取りすることで、パッドの馴染みを良くすることができる。パッド背面にバックプレートを組み合わせる際には、パッドグリスや鳴き止めグリスと呼ばれるシリコン系で硬めのグリスを塗布。パッド背面とバックプレート間、ピストン前面とバックプレートの接触部に薄く塗り伸ばすことで、パッドのビビリやブレーキング時のパッド鳴りを抑制することができる。 【POINT】 ▶ポイント1・単純な部品交換、パッド交換で終わらせずに周辺部品をクリーニングすることでブレーキ性能とフィーリングは向上する ▶ポイント2・ブレーキピストン周りだけでも複数の特殊工具がある。使い易い工具を揃えよう ▶ポイント3・スライドピンタイプはカジリ固着やピンの摩耗も要チェック。不具合発見時は部品交換しよう ブレーキは「効けば良い」というものではなく、良く効いて尚且つ「コントロール性が良い」ものが理想的である。パッド残量が十分あったとしても、パッドの材質とローターの相性がいまひとつ良くない場合は、効き具合やコントロール性に関しても、今ひとつな結果となっていることが多い。各メーカーから様々なブレーキパッドが発売されている理由には、そんな相性の違いや制動フィーリングの違いが、ライダー個々の好みとなり現れることがあるからだ。とにかくパッドの減りが早くても、良く効くブレーキを求めるライダーがいると思えば、効き具合よりもコントロール性を重視するライダーもいる。また、キャリパーやローター周辺が「汚れにくい」ことをうたい文句にした商品もある。どんな商品、どんなブレーキパッドが良いのかは、ライダー自身の好みを反映するものなので、一概に「この組み合わせがベスト」だと決めつけることができないのも、ブレーキパッドのチョイスなのだ。 同一モデルに乗る仲間が、自分の車両とは違ったブレーキパッドを組み込んだ時には、試乗を申し出て、実際に操作フィーリングや効き具合を体感してみるのも良いだろう。ブレーキパッドひとつの違いで、ブレーキフィーリングは相当に変わるものでもある。 単純にパッド残量うんぬんではなく、定期的なクリーンナップによっても、ブレーキ性能やレバータッチには違いが出るものだ。ここでリポートしたブレーキキャリパーピストンのもみ出しクリーニングのビフォー・アフターでは、顕著な違いを体感できた。さらにお手軽なメンテナンス実例を紹介しよう。ブレーキレバーの作動性がいまひとつ良くないときには、ピボットボルト周辺のクリーニングとグリスアップ、マスターシリンダーピストンを押し込む部分へのグリスアップ、さらには、マスターシリンダーピストンを180度回転させるなど、ピストン位置のローテーションを行うだけでも、ビフォー・アフターの違いに驚くことがある。次のメンテナンスタイミングには、これらの作業を実践してみよう。きっとその違いには誰もが驚くはずだ。
たぐちかつみ