「儲からない」けど「意義がある」社会課題解決に挑む5つのスタートアップ
Forbes JAPANではコロナ禍以降、「インクルーシブ・キャピタリズム(包摂的な資本主義)」という概念を提唱してきた。すべての人を包摂しながら発展する資本主義のあり方を意味する言葉だ。 今回、この「インクルーシブ・キャピタリズム」に関するひとつの取り組みとして、「もうからない」けど「意義がある」社会課題の解決に挑む非営利スタートアップを支援するインキュベーター・アクセラレーターの一般財団法人Soilと共同企画で「Soil/Forbes JAPAN基金」プロジェクトを開催。5人の起業家の寄付金の総額5000万円の基金から、採択先団体に1000万円の助成を行う。350団体以上のエントリーがあり、そのなかから合同審査会を経て5団体を採択した。ForbesJAPANでは誌面掲載等で支援する。 以降、同プロジェクトで採択した注目の5団体の「非営利スタートアップ」の社会課題解決への挑戦を紹介する。 ■武装勢力にかかわる若者を平和の担い手に 永井陽右|NPO法人 アクセプト・インターナショナル 「誰しもが、平和の担い手となり、共に憎しみの連鎖をほどいていく」。永井陽右が2011年に設立したNPO法人アクセプト・インターナショナルが掲げているパーパスだ。同団体は、ソマリアやイエメンなどの紛争地で、テロ組織を含む反政府武装勢力にかかわった若者を受け入れ、ケア・エンパワーメントし、彼らが武器を置き、社会に戻る支援を行っている。投降兵・受刑者に向けて、ケアカウンセリングや身元引受人の調整/長期フォロー、基礎教育・職業訓練などの教育・保護プログラムを提供。自律的な収入創出に向けて、スキル・ライフスキルを学ぶトレーニングなども行う。国内避難民への緊急人道支援や地域社会との和解に向けた対話なども行っている。 「世界でも数少ない活動を行う団体だが、それはODA(政府開発援助)が入らない分野、場所、対象者だから。ですが、意義があり、誰かがやらなければいけない重要なこと。武装勢力にかかわった若者は『加害者』として見られるが、これからの未来をつくっていく主体者となる存在ですから」 24年1月時点で、若者の社会復帰支援を2690人に行い、武装勢力から若者が自主的に脱する支援をした人数は500人を超える。社会的インパクトは51億円にのぼる。また、「パリ平和フォーラム2020」にて、世界を変える解決策として日本から初選出された。 「日本の国際社会でのプレゼンスは高くない。日本発だからこそできる革新的な問題解決法の創出をこれからも追求していきたい」 ながい・ようすけ◎NPO法人アクセプト・インターナショナル代表理事。テロと紛争の解決がミッション。国連関係では暴力的過激主義対策メンターなども務める。著書に『紛争地で「働く」私の生き方』など。