『笑いのカイブツ』岡山天音 自分にとっての“ものづくり”は生命維持のために必要なもの【Actor’s Interview Vol.36】
人間関係を捨てきることは出来ない
Q:エンターテインメント業界では、ツチヤさんのような“人間関係不得意”な人でも、圧倒的な才能や努力があれば成功するようなイメージもあります。ツチヤさんはうまくいかなったのが意外でした。 岡山:どうなんでしょうね。人間関係不得意で欠けている部分があったからこそ、あそこまでお笑いに没入していた部分もある。二つ同時には成立しないんじゃないかと思います。それこそ令和ロマンの髙比良くるまさんがコメントされていましたが、「ここまで圧倒的な才能があっても=(イコール)成功にはならないというのがお笑いの残酷なところだ」と。その通りだと思いますね。ほかの界隈でも同じで、人間関係を無視しても圧倒的な才能があれば許されるのかというと、残念ながらそうではない。やはりどこかで淘汰されている気がします。お笑いもお芝居も共同作業ですから、もっと少ない人数で出来る仕事の場合は分かりませんが、人間関係を捨てきることは出来ないと思います。 Q:仲野太賀さん演じるベーコンズの西寺が「ここでしか生きていけねーぞ!」と、何とかツチヤを救い上げようとしますが…。 岡山:そうですね。もうちょっと上手いことやれたらいいんですけどね。救い上げるという意味では成立しなかったかもしれませんが、西寺のような人がツチヤの人生に現れてくれたことは、すごく希望のある話だと思いますね。あのシーンは実話に基づいた部分ですし、人生って面白いなぁと。どれだけ絶望して呼吸困難に陥ろうと、そういう出会いの瞬間が訪れる。人として生きる上で、あの出会いは本当に救いだったと思いますね。 Q:母親も絶対に見捨てずに寄り添ってくれる。そこも同じ感じがします。 岡山:お互い剥き出しになった状態で心と心で会話することは、親子関係ならでは。胸がギュッとなる感じがあります。うちもツチヤと同じで母子家庭で一人っ子なので、ああいう繋がり方や切なさは身に覚えがありますね。 Q:菅田将暉さん(ピンク)や仲野太賀さん(西寺)とのシーンは、常にガチンコ勝負のようでヒリヒリしました。 岡山:大勢の人が「カイブツ」と呼んですれ違うだけの中で、ピンクも西寺も立ち止まって見つめるところは共通している。向けている視線の種類は違うかもしれないけれど、二人とも普通じゃない視線をツチヤに向けている。そこのニュアンスは監督もすごく細かく話されていました。 Q:あの二人に対して、ツチヤは近づきたいという思いがあったのでしょうか。 岡山:西寺に対しては確実にありましたね。一方でピンクに対しては近づきたいということではないけれど、明らかにその他大勢とは違う存在。まぁ四捨五入して友達とは言えるかどうかくらい。ピンクとツチヤの関係値は難しいんですよね。
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