赤旗の「裏金」「2000万円問題」スクープで自民に大打撃も…「共産党」はなぜ議席を減らしたのか
今回は社会・共産主義の解説
だが今回は自民党に強い逆風が吹いていた。しかも“反自民党”の世論を形成したのは他ならぬ共産党なのだ。赤旗の報道がどれほど自民党にダメージを与えたか、有権者に強く訴えるのがセオリーだろう。 「ところが志位さんは今回の衆院選で、『本当の社会主義、共産主義』についての解説を強く打ち出しました。私は街頭演説も見ましたし、ビラも持っています。演説では社会主義や共産主義によって『資本主義を乗り越える』と搾取がなくなり、私たちは『自由な時間を充分に手に入れることができる』と力説していました。社会・共産主義社会が実現すれば、1日4時間や5時間の労働で充分だというのです。自民党にお灸を据えようと考えている有権者が聞きたいのは、こんな演説ではないでしょう。自民党に対する痛烈な批判、裏金報道の成果を求めていたはずです。志位さんは前回に引き続き、今回でも選挙の争点、有権者へ訴えるポイントを間違えてしまい、歴史的大敗の原因を作ってしまったことになります」(同・筆坂氏) 筆坂氏によると、この奇妙な「社会・共産主義論」への傾倒は、今年の1月ごろから次第に明らかになってきたという。例えば赤旗の電子版は1月16日、委員長だった志位氏が第29回党大会で行った「あいさつ」を配信している。
選挙戦術の誤算
「あいさつ」の中に社会・共産主義について触れた部分があり、マルクスやエンゲルスは人間の自由を一貫して求め続けたと志位氏は指摘。さらにマルクスの『資本論』で到達した未来社会論の最大の特徴は、 《労働時間の抜本的短縮によって、すべての人間に十分な自由時間――「真の自由の国」が保障され、その時間を存分につかって自分自身の力を自由に発展させることのできる社会》 にあると強調。要するに社会・共産主義社会が実現すれば、われわれ労働者の余暇が増えるということらしい。 「この選挙戦術は二重の意味で間違っています。第1点は先に触れましたが、そんな解説を求めている有権者は基本的にいなかったということです。衆院選で訴えるべきポイントを間違えてしまった。第2点はマルクス主義の学術的な視点から見ても、誤っている可能性があるということです。マルクスの『ドイツ・イデオロギー』を読んでも、『共産主義革命を実現した後に来る社会のイメージ』は曖昧な説明に終始しています。と言うより、記述そのものが少ないのです。マルクスは共産主義革命が実現すれば素晴らしい社会が到来するとは考えていましたが、志位さんの言うような『労働時間が短くなる』といった具体的なことまで思い描いていたわけではないのです」(同・筆坂氏)