電気、ガス、水道が止まった家の「在宅ホームレス」化…43歳ひきこもり娘を案じた75歳母がすがった"頼みの綱"
70代両親は43歳の娘と暮らしている。軽度な知的障がいのある娘は、小学生の頃から不登校になり、10代半ばから1日の大半を自室にこもって過ごすように。家族以外の人と話せないまま30年もの月日が流れた。両親の悩みの種は、親亡き後、誰に娘の面倒を任せたらいいのかということだった――。 【この記事の画像を見る】 ■「社会的な手続きができない」ひきこもりは多い 私が相談を受ける年齢層としては、ひきこもりの当事者が40代以上のケースが大半であるが、その多くが学生時代からの不登校経験者である。中学生時代から不登校をしていたというケースもあるし、中には小学生の時に不登校になってしまったケースもある。 小学校や中学から不登校を続け、そのままひきこもりの生活を続けていると、「社会的な手続き」がまったくできないまま大人になってしまう。ひきこもりの問題はお金だけではなく、手続きの不備もかなり大きいと感じている。 たとえば長期のひきこもりの子どもで、親が突然亡くなってしまい、立派な家や多額の財産が残されたにもかかわらず、手続き方法がまったくわからないために、そのまま放置。電気やガス、水道が止まった「在宅ホームレス」になってしまったことがある。親の葬式は、病院から連絡を受けた親戚が執り行ったと聞いて、その点だけは安心したが、ひきこもりの子どもは行政が手助けをするまで、半年近くライフラインのない家に住んでいたそうである。 ひきこもりの子どもが在宅ホームレスになってしまうのを防ぐために、兄弟姉妹の協力はある程度必要だと考えている。だが、兄弟姉妹に生活サポート全般を任せるのは荷が重すぎる。そこで私から親側に、「兄弟姉妹にやってもらいたいことリスト」の作成を促すことがある。そのリストの中から、彼ら(兄弟姉妹)にやれること、やれないこと、やりたくないことなどを整理してもらい、やれないことは身元保証会社などの第三者の力を借りるという作戦を立てるためにだ。 ■知的障がいが原因で、同級生とうまく交われなかった 三山由紀さん(仮名・43歳)は、軽度の知的障がいが原因で、幼稚園や小学校になじめず、小学校時代からは断続的に不登校を繰り返してきた。具体的には、小3の時に学校に行けなくなり、ときどき保健室登校をしていた。小4のときには、由紀さんに寄り添ってくれる先生が担任となったことから、1年のうち、3カ月くらいは、教室登校ができたという。 ところが、小5の時に担任が代わった。その担任からはなんとなく疎まれている感じがして、支援学級への転入も勧められた。知能指数としてはグレーゾーンに当たるため、普通学級に通うこともできるはずだったが、由紀さんは担任に不信感を抱くようになり、再び不登校になってしまった。小5からはほとんど通えないまま、小学校は卒業した。 小学校を卒業した後は地元の中学に進学はしたものの、3年間通算しても両手で数えるくらい、保健室登校をしただけ。同級生は、由紀さんが同じ中学に存在することすら、気づいていなかったのではないかという。 高校は1年遅れて夜間部に入学したが、そこには不良のような学生がいたことから、由紀さんはクラスにまったくなじめず、高校へもほとんど通えなかった。中学生くらいまでは、外出はできないものの、家族と一緒に食事はしていたのに、高校に入学した頃から、食事をひとりで取るようになり、1日の大半を自室にこもって過ごすようになっていった。