電気、ガス、水道が止まった家の「在宅ホームレス」化…43歳ひきこもり娘を案じた75歳母がすがった"頼みの綱"
■60歳を過ぎていたら、ケアハウスでの暮らしも検討できる 三山さんの父親(77歳)は、大手の電機メーカーを60歳で定年退職したのち、67歳頃まで従業員30人くらいの小さな会社に転職して、引き続き、働いていた。母親(75歳)は結婚してから、ずっと専業主婦として過ごしてきた。 由紀さんには、2つ上の兄(45歳)がいる。兄は勉強もできて、スポーツも得意。妹のことも気にかけてくれる優しい性格でもある。そんな兄は27歳の時に結婚して、今は高校生と中学生の子どもを持つ父親になっている。住んでいるのは、車で1時間くらい離れた場所だという。 ---------- 【三山家の家族構成】 父親(77歳) 母親(75歳) 長男(45歳) 結婚して別居。子ども2人 長女(43歳) 当事者 【資産状況】 三山家の貯蓄 4100万円 年金 夫婦で月26万円 長女の貯蓄 1260万円(障害年金の貯蓄分)※障害年金受給中 自宅は持ち家(築24年) ---------- 由紀さんは、家族以外の人と話せないまま30年もの月日が流れている。何とか話せるのは、ときどき通っている精神科クリニックの先生くらい。担当医が変わった時は、1年以上、新しい先生になじめずに苦労したとのこと。 三山さんの母親は、「娘が普通に働けるようになるなど、そんな大それた希望は持っていません。親と暮らしている間は、親がすべての面倒をみていくつもりですが、親亡き後は、誰にこの子の面倒を任せたらいいのかと、最近はそればかり心配で、夜もよく眠れません」という。 家庭の資産は貯蓄4100万円で、両親の年金は月26万円。持ち家で3人暮らしの家計は赤字ではない。由紀さん本人も障害年金を月7万円弱受給しており、障害年金の多くはそのまま貯蓄に回っている(現在1260万円)。お金に困る状況ではないが、両親の唯一の心配は自分たちの亡き後のことだ。 【畠中】娘さんは、親亡き後、一人暮らしをするのは、難しそうですね。障がい者のグループホームなどを調べられたことはありますか? 【母親】気になってはいるのですが、具体的に調べた経験はありません。娘は誰かと一緒に暮らせる気がしないこともあり、今までは積極的に調べてきませんでした。グループホーム以外の選択肢はないのでしょうか。 【畠中】親御さんが亡くなられたとき、娘さんが60歳を超えていたら、ケアハウスに移り住むプランも考えられます。ケアハウスは「軽費老人ホームC型」の別称で、個室で暮らせて食事は3食提供されます。お風呂は大浴場を使います。ケアハウスは自立した人の生活の場ですので、食事時間や入浴可能時間が決まっていること以外、1日の生活にルールは特にありませんので、娘さんの食事やお風呂などの生活周りの問題は、ほぼ解決するように思います。ケアハウスは収入によって月額費用が変動しますが、娘さんの収入は障害年金だけですから、ひと月7万~9万円程度で暮らせるケアハウスを探せますよ。 【母親】ケアハウスって、介護が必要な人が入居するところだと思い込んでいましたが、娘のような障がい者でも入所できるんですか? 【畠中】娘さんの知的障がいは軽度ということですし、食事が作れなくても、身の回りのことがある程度できれば、住み替えの可能性はあります。また、ケアハウスは要介護認定を受けてから、原則として入所申込みはできないんですよ。ここは、よく誤解されているところですね。 ケアハウスに入所した後は、要介護3くらいまでは継続して住み続けられるところも少なくありません。要介護3以上と認定されてしまったら、特養に申し込んで住み替えをして、特養を終の棲家にするプランも検討できます。特養は資産基準というルールが導入されたことによって、負担が重い人が増えて、その結果、かなり待機者が減ってきています。また、ケアハウスを経営している法人は特養も経営しているケースが多いので、介護の住み替えまで一気に解決できる可能性があります。 【母親】ケアハウスという存在は知りませんでした。 【畠中】ケアハウスは60歳以上から申し込めるのですが、有料老人ホームと違って、広告宣伝費をかけているところはほぼありませんので、自分で調べないとなかなか出会えないのが現実です。また、ケアハウスに60歳そこそこで入所している人はほとんどいません。入所者の平均年齢は70代後半から80代前半くらいではないかと思いますが、知的障がいをお持ちの娘さんの場合、同年代よりも10歳以上年が離れている方たちの中で暮らしたほうが、暮らしやすいんじゃないかなとも思うんです。 【母親】同級生たちにはいじめられたというか、うまく付き合えませんでしたから、たしかにそういう考え方もありますね。