兵庫県知事選挙現地ルポ/「民意って何?」が今、問われている(オフィス・シュンキ)
兵庫県知事選挙が10月31日に始まり、届け出順に清水貴之(しみず・たかゆき)氏、稲村和美(いなむら・かずみ)氏、斎藤元彦(さいとう・もとひこ)氏、大沢芳清(おおさわ・よしきよ)氏、福本繁幸(ふくもと・しげゆき)氏、立花孝志(たちばな・たかし)氏、木島洋嗣(きじま・ひろつぐ)氏の無所属7人の争いとなりました。11月17日に投開票に向けて、選挙戦もいよいよ終盤戦に突入しています。 この選挙は、今年3月に前知事である斎藤候補が職員らに「パワーハラスメント」と取られる行為や地方への視察の際、特産物などの提供を求めることなどを行っていたとする内部告発文書に端を発しています。この文書の作成者を特定するために兵庫県側は前知事の指示で動いたのですが、4月に入って作成者と判明した職員が実名で「公益通報」を行ったことで事態は複雑化。最初の文書を「公益通報」とみなさなかった兵庫県側は職員に処分を科しましたが、この対応が正しかったかどうかが県議会で問われ、事実を明らかにするために「百条委員会」が設置されますが、その最中に当該の職員が自死する事態が起こったことで、前知事の「道義的責任」がいわれることになり、ついには「百条委員会」の結果を待たずに、議会で出された「不信任決議」が全会一致で可決されたことから前知事が「失職」を選んだ、というのが経緯となります。前知事の任期は来年7月まででしたが、失職によって知事選は本来の予定よりも約9カ月前倒しで実施されることになりました。こうした一連の騒動が兵庫県のみならず日本全国に大きなニュースとなって広まりっている中での選挙戦。筆者は前回と同じく「住民目線」での取材を心掛けて臨むことにしました。
政党色が薄く、かつてないほど住民に近い選挙戦に
この選挙の特色は政党色の薄さです。清水氏を兵庫維新の会および自民党神戸市議団が政策協定書を交わした上での支援、稲村氏を立憲民主党と国民民主党兵庫県連が支援、大沢氏を日本共産党が推薦していますが、自由民主党、公明党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党を始めとしたほとんどの国政政党が基本として「自主投票」としており、街頭ではほぼ政党名がでてきません。その代わり、候補者やその支援者が「個人」として街頭演説や討論会などで声を張り上げ続けることになっています。筆者は2021年夏に行われた前回の選挙を取材した際には「有権者置き去り?」の感触をもったのですが、今回は正反対。これほど、住民に近い選挙は見たことがない、といい切れる選挙が目の前で展開されています。