【富士山女子駅伝】不破聖衣来の快走…五十嵐監督が涙したワケ 書き込まれていた〝誹謗中傷〟
【取材の裏側 現場ノート】全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝=12月30日、富士山本宮浅間大社前~富士総合運動公園陸上競技場、7区間43・4キロ)で過去最高の4位に入った拓大の五十嵐利治監督は、エースの激走に思わず涙腺が緩んだ。 【写真】拓大の五十嵐利治監督 この日は最長区間の5区(10・5キロ)を担った不破聖衣来が、区間2位(33分51秒)の好走で6人抜きを達成した。近年はケガに苦しんでいた不破の走りに、多くの関係者が太鼓判。完全復活ののろしを上げたが、ここまでの道のりは決して順風満帆ではなかった。 かねて貧血や故障に悩まされ、1年半以上レースから遠ざかった時期もあった。食事、トレーニングなどさまざまな角度から長期的な視点で体づくりに励むも、事情を知らない一部のファンは「お前のせいで不破選手がつぶれた」などと五十嵐監督を誹謗中傷。「ネットのコメントなんて見なければいいのにと思っていたけど、いざ自分に来るとさすがにメンタルに来るね」と当時を回想。それでも五十嵐監督はめげずに、不破と二人三脚で歩みを進めてきた。 今も不破は、あくまで発展途上の段階。まだ4~5か月ほどしか継続して練習を積めていない。それでも、区間賞を獲得したサラ・ワンジル(大東文化大2年)とはわずか6秒差。最後まで笑顔で富士の地を駆け抜けた。さまざまな困難を乗り越えた不破の姿に五十嵐監督は「いろいろ言われて苦しかった時もあるけど、今日の聖衣来の走っている時の笑顔見たら、それが全部吹っ飛んだ」と頬を緩めた。 「将来はマラソンをやりたい」と話す不破は、実業団の名門・三井住友海上で競技を続ける。五十嵐監督は「今後マラソンをやっていく中でいい時もあれば悪い時も絶対あると思うし、故障もすると思う。いろいろ言われてきつい時もあるかもしれない」としながらも「今日みたいな聖衣来の笑顔がその先見られると思ったら頑張れる」。苦しみの先にあるのは2028年ロサンゼルス五輪の表彰台。2人の満面の笑みが見られる日が今からもう待ち遠しい。(五輪担当・中西崇太)
中西崇太