バナナ売り場なのになぜ…隣に置いたら大人気になった「意外な商品」とは?
あなたは今日のランチ、何を食べましたか? あなたが選んだお店、お弁当、カップラーメン…そこでは、「あなたの昼食需要」を巡るマーケティングのバトルが起きています。マーケティングの目的を達成するのに最低限必要なのは、「ベネフィット」「ターゲティング」「差別化」「4P」という4つの理論だけ。佐藤義典さんの著書『ドリルを売るには穴を売れ』(青春出版社)から、マーケティングの基本理論であり、最重要理論でもある「ベネフィット」について解説します。 ● 顧客にとっての「価値」から考える マーケティングにおけるベネフィットとは、「顧客にとっての価値」です。カタカナの用語を使うのはなるべく避けたいところですが、よく使われる言葉なので覚えておきましょう。「価値」というと少々固い感じがしますが、平たく表現すると、お客様の「うれしさ」となります。お客様があなたの商品・サービスを使って、どううれしくなるのか、ということです。 たとえば、あなたの仕事が工具のドリルを売ることだとします。あなたにとっての売り物はドリルですが、顧客にとっては、ドリル自体ではなくドリルが開ける「穴」に価値があるのです。つまり、この「穴」がベネフィットということになります。お客様は穴を開けられてうれしい、ということですね。 顧客は「ドリル」を買っているわけではなく、「穴を開ける道具」を買っているのであり、あなたはドリルではなく「穴を開ける道具」を売っているのです。これは、買い手にとっては当たり前のことですが、ほとんどの人は売り手になった瞬間に忘れてしまいます。
マーケティングに特殊な理論は存在しません。あなたが買い手であるときにはすべて知っていたり感じていたりすることであり、その当たり前のことを体系化したのが「マーケティング」なのです。 ここで少々戻って、「マーケティングとは何か」ということを確認しておきましょう。マーケティングとは、本質的には「顧客にとっての価値(=うれしさ)」を提供し、その対価として、顧客からお金をいただくこと。 少々学問的に言えば、「価値のやりとり」です。売り手が、製品・サービスなどを通じて買い手である顧客に価値を提供する。ドリルで言えば「穴を開ける」という価値を提供する。顧客は、お金などを売り手に支払ってドリルを手に入れ、穴を開ける。 マーケティングにおいては、このことが一番重要です。どんなに難解なマーケティングの本に書いてある知識や技術、テクニック論も個別具体論であり、この「価値」がマーケティングの中心概念だと覚えておきましょう。 ● あなたの商品がもたらす「何かいいこと」 あなたが何を売っているかということについて、もう少し考えてみましょう。もしあなたが果物屋さんだとすると、売り物は「果物」かもしれませんが、実際は「果物」がもたらす価値を売っています。 一方、お客様が買った価値とは、果物によってもたらされる「何かいいこと」です。たとえば、「料理しないで食べられて、しかもヘルシーな朝食」や、「夕食の後の、さっぱりしたデザート」などですね。 実は果物屋さんは、「手軽でヘルシーな朝食」屋さん、「さっぱりしたデザート」屋さんであるともいえるのです。そしてその「手軽でヘルシーな朝食」「さっぱりしたデザート」こそ、あなたがお客様に提供しているベネフィット(=価値=うれしさ)なんです。 ヘルシーな朝食屋さんであれば、ヨーグルトやできたてのフルーツジュースを一緒に売ってもいいですよね? デザート屋さんであれば、コンデンスミルク、チョコレートシロップなどを売ってもいいですよね? 「何を売っているか」によって、果物屋さんが売上げアップのためにやるべきことは変わってくるのです。