備蓄だけでは限界が? 専門家が教える「災害時に本当に必要なもの」
キャンプ好きな3人の女性から成る「CAMMOC(キャンモック)」。防災士の資格をもつキャンプインストラクターとして、"いつも"の暮らしを豊かにするものが"もしも"のときも役立ち支えてくれるという「フェーズフリー」の考え方のもと、目指すは、理想的なライフスタイルと防災の両立。 【写真】冷蔵庫や電子レンジがない環境で作る「キャンプ飯」のレパートリーは、日常や非常時の料理のアイデアにも。 そのためのアイデアが、新刊『ラクして備えるながら防災 フェーズフリーな暮らし方』にたっぷり収録されています。 キャンモックのマミさんが、フェーズフリーの普及や、フェーズフリーな商品やサービスの企画、認証を行う「フェーズフリー協会」代表、佐藤唯行さんと対談。その様子を全3回の連載でお届けします。本記事は第2回です。 (構成:三浦ゆえ)
まずはキャンプや防災のイメージをフリーに
【佐藤】マミさんたち「キャンモック」のみなさんは、キャンプの本格的なスキルや、自然にふれる豊かさを知ったうえで活動されていますが、それをストレートに伝えるのではなく、暮らしに取り入れるという形で提案していますよね。マミさんが子どものころに経験したガールスカウトのような、体育会系キャンプのイメージがない。それは、どうしてですか? 【マミ】それだと広まりにくいと思っているんですよね。キャンモックでは以前、「ママキャンプ」という企画が人気でした。0歳児も歓迎で、赤ちゃんと一緒にヨガをしたり焚き火を囲んだり......。ママたちにリラックスして楽しんでもらうことが目的なので、テントも寝袋もぜんぶ、こちらで用意するんです。 【佐藤】参加者は手ぶらで? 【マミ】はい、身ひとつで来てください、と呼びかけていました。 【佐藤】ああ、いまひとつ腑に落ちました。マミさんたちにとってキャンプやアウトドアはすごく大切で、自分たちの人生を豊かにしてくれるコンテンツだけど、多くの人にとってはそうではない。「なんか、たいへんそう」「虫が出たらイヤだな」「道具もないし」と高いハードルと感じている。つまり、キャンプ好きと、そうでない人は違うフェーズにいるということですよね。 【マミ】まだ楽しさを知らない人たちにとっては、構えてしまうものなのでしょう。カジュアルに楽しめるピクニック感覚のデイキャンプやおしゃれなグランピングスタイルのキャンプもあるのに、サバイバルキャンプを想像してしまう人も多いと思います。 【佐藤】そこで、参加のハードルを下げて、まずは自然のなかにダイブする楽しさを知ってもらう......。これ、私たちが防災で提唱しているフェーズフリーと同じだと思うんです。日常時と非常時、それぞれのフェーズのあいだにある垣根をまたぐアイデア、商品、サービスを発信していますが、キャンモックさんは日常とキャンプ、それぞれのフェーズのあいだにある垣根を越えてもらう活動をしてきた。 【マミ】私たちは、キャンプすることで身も心も豊かになるし、人間関係も穏やかになっていくと知っているので、それを伝えたいんですよね。それがあったから、キャンプのある暮らしとフェーズフリーの防災も、すぐにつながったのかもしれません。考えてみれば、キャンプと防災のフェーズもフリーでした。たとえばキャンプサイトを作るとき、ロープが緩んでいるところがあればパッと見て確認できるようにするなど、ひと目で見渡せるようにしておかないといけない。 【佐藤】しかも、キャンプサイトって作る場所が毎回変わるわけだしね。 【マミ】はい、仮に同じ場所だとしても、季節によって気温も日の射し方も違います。だから、行くたびに何が最適なんだろうと考えるんです。そうやって、毎回考える訓練をしてきたおかげで、家のなかを災害時に危険な場所がないかひと目でわかるレイアウトにする、と考えられるようになったんだと思います。 【佐藤】非常時のためにわざわざ考えた、というのではないところが、"ながら防災"の強みですね。楽しみながら、暮らしながら、そのなかで自然と生まれた。