<ポスト道長>を画策した三条天皇。秘薬「金液丹」に頼るもまさかの結末に…妍子との娘・禎子の物語にいいように使われた「三条の悲劇」について
◆秘薬「金液丹」を170年ぶりに処方した結果… それから三条はどうしたか? この時期の道長が健康不安を抱えていたこともあり、まず<長生き>しようと考えたのでしょう。 しかし藤原実資の『小右記』によると、三条も東宮時代から「風病(神経痛から脳内出血まで、運動機能の減退を伴う病気)」「瘧病(マラリアに急な発熱を伴う病気)」を患うなど、不健康という意味では道長といい勝負でした。 その不健康さは「一条天皇より年上の東宮」という立場で、25年間ものストレスフルな生活におかれた結果なのでしょうか。しかも、即位後その環境はなお厳しいものになったと考えられます。 そこで三条は万能健康薬と言われる「金液丹」という秘薬を、天皇としては9世紀の仁明天皇以来約170年ぶりに処方させます。 しかしこれは中国の神仙思想に基づく、仙人になるための薬で、成分に水銀やヒ素を含んでいる劇薬、というかほとんど毒物で、健康被害を誘発した可能性が高いのです。
◆目を患った三条天皇 その三条天皇には有名な「目を患った話」があります。 三条の眼病については、『小右記』の長和四年の記事にはかなり詳しく書かれているのですが、日によって症状が違っていたようです。 ちなみに『御堂関白記』にはこの時期の記事がなく、藤原道長に近い立場で書かれた歴史物語『栄花物語』はほとんど無視しています。 面白いのは同時代を書く『大鏡』が、三条の眼病は院になったあと、つまり譲位後のこととし、譲位に至るまでの道長との葛藤とは、別の話にしていることです。 『大鏡』では、「金液丹」の話とともに、桓算(史実では賀静というらしい)という僧が天狗になって、天皇の肩の上に乗っていると記しています。 その天狗の左右の羽で三条は目を覆っており、羽ばたきをする時にだけ見えるのだ、と。 かなりフィクション性が高いことから、『大鏡』はかなり話を盛っているように思われます。
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